「よし、今日はあの崩れた塔だな！」ラーンが拳を握りしめると、イシェは眉間にしわを寄せた。「また、そんな危ない場所に？あの塔は落石が多いって聞いたぞ。それに、テルヘルは何かの調査をしてるんじゃないのか？」
ラーンの楽観的な性格とイシェの慎重さはいつも対照的だった。だが、二人は幼馴染であり、互いに信頼していた。
「大丈夫だ、イシェ。俺が行く場所を決めたら、必ず何か見つけるんだ！」ラーンは自信満々に笑った。イシェはため息をついた。「わかった、わかった。でも今回は本当に気を付けてね」
テルヘルはいつも冷静沈着で、目的のためなら手段を選ばないタイプだった。遺跡探索の依頼人でありながら、彼らには謎が多く、何か大きな計画を企んでいるように思えた。
崩れた塔に着くと、ラーンは早速中へと入っていった。イシェは少し遅れて、後ろから続く。塔内は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。壁には苔が生え、一部は崩れ落ちている箇所もあった。
「ここなら何かあるかもしれないな」ラーンの声が聞こえた。イシェが振り返ると、ラーンは壁の隙間をこじ開けていた。「何だ、これ？」
ラーンの手の中に、小さな石の板があった。イシェも近づき、その石板を見つめた。「これは…？」
石板には複雑な模様が刻まれており、イシェには意味が分からなかった。しかし、ラーンは目を輝かせた。「これはきっと何か重要なものだ！」
その時、塔の一角から崩落音が聞こえた。ラーンとイシェは振り返ると、大きな岩が落ちてきていた。間一髪で避けられたものの、ラーンの足元には岩が転がっていた。
「ヤバい！逃げろ！」イシェが叫んだ。二人は慌てて塔の外へ飛び出した。
崩落する塔の影に隠れながら、ラーンは石板を握りしめていた。「これは…もしかしたら…」彼の目は興奮で輝いていた。
イシェはラーンの様子を見て、何かを感じ取った。「ラーン、落ち着いて。まず安全な場所に…」
その時、背後から声が聞こえた。「やあ、遅かったかな？」
振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女の顔には冷たい笑みが浮かんでいた。
「あの石板…何だ？そして、なぜここに？」イシェはテルヘルを睨みつけた。
テルヘルはゆっくりと近づき、石板をラーンの手から奪い取った。「これは私が探していたものよ」彼女は石板を手に取り、目を輝かせた。「これで私の計画は一歩前進する…」
ラーンの顔は真っ青になった。「何をするつもりだ？」
テルヘルは嘲笑した。「そんなことは、お前には関係ないわ」そして、石板を握りしめ、塔の崩落と共に姿を消していった。