夕暮れのビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑い声を上げていた。イシェは彼の背後からため息をつき、テーブルの上に置かれた空になった酒樽を見つめた。
「また、大穴の話か。」
ラーンの目は輝いており、「いつか必ず掘り当てる」と断言した。イシェは彼の熱意を理解しながらも、現実的な問題を指摘した。「遺跡探索で稼いだお金はほとんど飲み代に消えていくじゃないか。大穴が見つかる前に、お前が先に空腹死するんじゃないかと心配だ。」
ラーンの笑顔が一瞬曇ったが、すぐに元に戻った。「大丈夫、イシェ。俺には運がいいって言うものがあるんだ。いつか必ずあの大穴を見つける時が来る。その時こそ、ビレー中の酒を飲み干してやる！」
その時、店の入り口に影が差した。黒装束を纏い、鋭い眼光を持つテルヘルが店に入ってきた。「準備はいいか？」と冷たい声で尋ねた。ラーンは立ち上がり、笑顔を見せた。「いつでも行くぞ！」
テルヘルの指示で、彼らはビレーから離れた山岳地帯へと向かった。夕暮れの空がゆらめき、影が長く伸びていく中、彼らは遺跡への入り口を探していた。イシェは不安を感じながらも、ラーンの熱意に押され、一歩ずつ進んでいった。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気で満たされていた。石畳の上には苔が生えており、足元を滑りやすくする。ラーンは先頭を走り、イシェとテルヘルは後を追った。
「ここだ。」テルヘルが突然立ち止まった。「この壁に何かがあるはずだ。」彼女は鋭い目で壁を凝視し、指で壁をなぞり始めた。すると、壁の一部がわずかに沈み込み、隙間が見えた。
「見つけた！」ラーンは興奮した様子で叫んだ。イシェも息をのんだ。テルヘルは慎重に隙間を開け、中を覗き込んだ。「何かあるようだ。」彼女は低い声で言った。
彼らは協力して石板を動かすと、その奥には小さな部屋が現れた。部屋の中央には、光る水晶が置かれており、その周りを奇妙な模様が刻まれた石版が囲んでいた。水晶はゆらめく光を放ち、部屋全体を幻想的な雰囲気に包んでいた。
「これは…！」ラーンは目を丸くして呟いた。イシェも言葉を失った。テルヘルは冷静な表情で水晶を見つめた。「これが俺たちの目的だ。」と彼女は言った。