ラーンがいつもどおり、大げさな声で遺跡探検の話をしていた。「今回は絶対だ！あの地図にある秘宝の場所が分かるはずだ！」 イシェはため息をつきながら、ラーンの背中に手を当てて静かに言った。「落ち着いて。地図なんてただの噂だよ。それに、あの遺跡は危険だって聞いたわ」
ラーンはイシェの言葉を耳にせず、「おい、テルヘルさん！準備はいいか？」と叫んだ。テルヘルは鋭い目をした女性で、常に冷静沈着だった。彼女は静かに頷くと、背負った袋から地図を広げた。「準備は完了だ。遺跡に入る前に、もう一度計画を確認しよう」
三人はゆっくりとビレーの町を後にし、山道に続く道を歩いた。太陽が燦々と降り注ぎ、あたりは緑の葉っぱで覆われている。ラーンの足取りは軽快だったが、イシェは少し遅れて歩いていた。彼女は景色を眺めながら、深く考え込んだ表情をしていた。
遺跡の入り口には大きな石碑が立っていた。そこには古びた文字が刻まれており、テルヘルがゆっくりと読み上げた。「『この地に眠るものは、偉大なる王の遺産である』…」
三人は息を呑んだ。遺跡の入り口は暗く、湿った空気が漂っていた。ラーンの胸が高鳴り、イシェは不安を感じながらも、テルヘルの後ろをついていった。
遺跡の中は迷路のように複雑な構造だった。壁には奇妙な模様が刻まれており、床には苔が生えていた。彼らはゆっくりと進み、足音だけが響いていた。
「ここだ！」ラーンが突然叫んだ。彼は壁の奥に何かを見つけたようだった。イシェもテルヘルも駆け寄ると、そこには小さな宝箱があった。ラーンは興奮気味に宝箱を開けた。
しかし、宝箱の中には何も入っていなかった。ラーンの顔色が変わった。「え、何だこれは…」 イシェは静かに言った。「よかったわね、ラーン。また大穴を掘り当てたと思ったのね」
テルヘルは冷静な表情で、遺跡の奥へと歩き始めた。「まだ諦めるには早すぎる。この遺跡には何か秘密があるはずだ」