ラーンが興奮気味に遺跡の地図を広げるのを、イシェはため息交じりに眺めていた。
「また新しい遺跡か? ラーン、本当にあの辺りに行くつもりなのか?」
「だってさ、イシェ! この地図には『失われた王家の墓』って書いてあるんだよ! もしかしたら、そこには…」
「宝なんて、そんなもんないよ。それに、あの場所はヴォルダンと接する辺境だし、危険すぎるだろ」
ラーンの目は輝いていた。イシェの言葉は届いていなかった。「いや、今回は違う気がする! この遺跡…何かが呼んでるんだ!」
その瞬間、背後から声がした。
「準備はいいかい? 探索開始だ」
テルヘルが鋭い眼差しで二人を見下ろしていた。
「ああ、もう決めたのか?」イシェは諦めたように言った。「いつも通り、危険な目に遭うことになるんだろうな…」
ラーンはテルヘルの言葉に興奮した様子を見せながら、「さあ、イシェ! 大穴を掘り当ててやるぜ!」と叫んだ。
イシェは深くため息をついた。ラーンの無謀さに呆れる一方で、彼と一緒に冒険する楽しさにも心を躍らせていた。
「やだ… また大変な目に遭うんだろうな…」
それでも、イシェは二人が行く道に続く細い道を歩き始めた。