ラーンの大笑い声が、埃っぽい遺跡の奥深くまでこだました。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の手が触れた石壁の模様を指差した。「ラーン、また無駄なことを…。あの紋様、さっき見たやつと一緒じゃないか？」
ラーンは肩をすくめた。「そうかな？ それに、こんなところに宝物が隠されているかもしれないんだぞ！」彼の目は輝き、イシェの冷静な判断を簡単に吹き飛ばしていた。
その時、後ろから声がした。「二人とも、そろそろ諦めませんか？」テルヘルが、薄暗い通路に影を落としながら近づいてきた。彼女の鋭い視線が、ラーンの無謀さに向けられているのがわかった。
「いや、まだだ！ほら、イシェも見てみろ！」ラーンは、壁の奥深くにある小さな隙間を指さした。「あの隙間から何か光が…！」
イシェはため息をつきながら、ラーンの指差す方向を見た。確かに、かすかに光が漏れているようだった。「もしかしたら、何かの仕掛けかもしれない…」と呟くと、テルヘルに振り返った。「彼女はどう思う？」
テルヘルは静かにうなずき、小さな宝石の入ったポーチを取り出した。「念のため、念話で確認してみましょう。」彼女は宝石を一つ取り出し、イシェに手渡した。「これで、この遺跡の構造を把握できるはずです。もし危険な仕掛けがあれば…」
イシェは宝石を握りしめ、目を閉じた。すると、頭の中に、複雑な迷路のような構造図が浮かび上がった。そして、その中心部にある、小さな光の源を発見した。
「あの光…それは…」イシェの声が震えた。「宝箱だ！」
ラーンの顔は歓喜に満ち溢れた。「やった！ついに大穴を見つけたぞ！」
テルヘルは冷静な表情で言った。「しかし、注意が必要だ。この遺跡には、危険な罠も存在する可能性が高い。」
イシェは宝石を握りしめ、深く頷いた。「わかった。慎重に進もう。」
三人は、宝箱に続く通路へと足を踏み入れた。その瞬間、壁から突然の光が放たれ、ラーンとイシェを包んだ。そして、二人は見慣れない景色の中に迷い込んだのだった。
「ここは…どこだ？」
イシェは目を丸くして周囲を見回した。そこは、広大な草原が広がる、見知らぬ世界だった。空には二つの月が輝き、遠くには、巨大な城壁が見える。そして、その城壁の上で、一人の少女が彼らをじっと見つめていた。
少女の瞳は、どこか懐かしい光を放っていた。まるで、遠い昔に、どこかで出会ったことがあるような…。
イシェは、胸に何かが締め付けられるのを感じた。この「めぐり逢い」には、きっと大きな意味があるはずだと、直感したのだ。