「よし、今日はあの崩れた塔だ!」
ラーンが目を輝かせ、地図を広げた。イシェは眉間に皺を寄せながら、指で塔の位置を確認した。
「またしても危険な場所じゃないか。あの塔は魔物が徘徊しているという噂だよ」
「そんなこと気にすんなって!大穴が見つかるかもしれないんだぞ!」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。いつも通り、彼の計画性のない行動に振り回されることになるのだろう。だが、彼と一緒に遺跡を探検するのは楽しいのも事実だった。
その時、テルヘルが口を開いた。
「あの塔には、ヴォルダンがかつて封印したという魔物の噂があるらしい。もし見つけられたら、強力な武器になるかもしれない」
彼女の言葉に、ラーンの目はさらに輝きを増した。イシェは二人の様子を見て、複雑な気持ちになった。テルヘルはいつも目的のために手段を選ばないタイプだ。今回の依頼も、単なる遺跡探索ではない何かが隠されていると感じていた。
「よし!準備はいいか?みんな、大穴を見つけるぞ!」
ラーンの一声で、三人は塔へと向かった。崩れかけの石畳を踏みしめ、深い森の中へと進んでいく。
イシェは振り返り、背後に広がるビレーの街並みと、その向こうにそびえるヴォルダンの国境線を眺めた。みんな、それぞれの理由でこの旅を選んだのだ。そして、今は互いに支え合っている。
「大穴」を見つけるためには、危険も伴うだろう。それでも、彼らは歩み続ける。