「よし、今回はあの崩れかけの塔だ！」 ラーンが目を輝かせ、イシェの地図を指差した。イシェはため息をつきながら頷いた。いつも通り、ラーンの計画は漠然としていて、危険度も不明瞭だった。「あの塔は崩落寸前だって聞いたわよ。本当に大丈夫なの？」
「大丈夫、大丈夫！俺が先頭に立って道を開けばいいんだろ？イシェは後方支援で、テルヘルは敵が現れたら剣を抜くだけだ！」 ラーンの豪快な声は、ビレーの喧騒を吹き飛ばすようだった。テルヘルは彼の熱意に少し苦笑する。だが、彼の瞳には、過去の炎が燃えていた。「あの塔には何かあるはずだ。ヴォルダンが隠した何か…必ず見つける。」
遺跡へと続く道のりは険しく、崩れた石畳と密生した茂みで覆われていた。ラーンの前を進む姿は、まるで獣のように力強く、イシェは彼の後ろを静かに着いていく。テルヘルは二人を見つめながら、沈黙を守っていた。
塔の入り口にたどり着くと、ラーンが興奮気味に叫んだ。「ついに来たぞ！大穴だ！」だが、その奥には、朽ち果てた石畳と埃っぽい空気が広がるだけだった。イシェは肩を落とした。「またハズレか…」 ラーンの顔色が曇る中、テルヘルは静かに何かを見つけていた。壁に刻まれた、かすれた文字列だ。彼女はゆっくりと指でなぞりながら、「これは…古代ヴォルダン語だ。」
「古代ヴォルダン語？何て書いてあるの？」ラーンの好奇心の火が再び燃え上がった。テルヘルは深呼吸し、「ここに眠るものは、真の力を秘めている。だが、その力を解き放つには…」 彼女は言葉を止めた。イシェが不安げに彼女を見つめると、テルヘルはゆっくりと微笑んだ。「さあ、皆さんの力を貸してください。私たちは、まばゆい光を手に入れるために。」