「おい、イシェ、準備はいいか？」ラーンが剣を片手にビレーの tavern の入り口から顔を出した。イシェは小さな荷物を背負い、少し遅れて店から出てきた。「準備はできているよ。いつも通り、地図と道具は確認したわ」彼女は冷静な声で答えた。ラーンの後ろからテルヘルが合流する。「よし、今日はあの遺跡だな。噂によると、奥深くには未開の部屋があるらしいぞ」テルヘルが声を張り上げると、ラーンは興奮気味に頷いた。イシェだけが、テルヘルの言葉の裏にある何かを感じ取っていた。
三人は遺跡へと向かい、深い森の中を進むにつれて、日差しは薄くなり、あたりは静寂に包まれた。「ここだな」ラーンの声が響き、見慣れた遺跡の入り口が現れた。しかし、今回はいつもと様子が違った。入り口付近には奇妙なシンボルが刻まれており、不気味な雰囲気を漂わせていた。イシェは少し不安を感じたが、ラーンとテルヘルは気にすることなく遺跡へと足を踏み入れた。
内部は暗く湿っており、埃っぽい空気が鼻腔を刺激した。ラーンはいつものように先頭を切り、イシェは後ろから彼を見守りながら慎重に足を進めた。テルヘルは後方から二人を見つめながら、何かを考え込んでいた。「ここには何かある」彼女は呟き、不気味なシンボルが刻まれた壁に触れた。その時、地面が突然震え、崩れ始めた。ラーンは慌ててイシェの手を掴み、安全な場所に逃げようとした。しかし、イシェは足がすくんでしまい、転倒しそうになった。
その時、テルヘルが駆け寄ってきて、イシェを助けた。「大丈夫か？」とテルヘルが声をかけると、イシェは深く頷いた。彼女はテルヘルの冷たい視線を感じながらも、感謝の気持ちを表した。「ありがとう」と小さく呟いた。三人は崩落した遺跡から脱出し、近くの森で一休みすることにした。
ラーンはいつも通りの調子を取り戻し、遺跡探検の興奮を語っていたが、イシェは沈黙を守った。彼女はテルヘルの行動に何かを感じていた。彼女の冷酷さと冷静さは、まるで孤独な影のように、イシェの心に重くのしかかっていた。そして、イシェは自分がこの冒険の中で、徐々にぼっちになっていくのではないかという不安を覚えた。