ラーンの大笑い声がビレーの朝を告げた。イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら、粗末なテーブルの上でパンをちぎっていた。「また大穴だと?あの遺跡、もう何十回も探しただろう」
「いや、今回は違うって!何か感じるんだ、イシェ。今回は必ず何かあるって!」ラーンは目を輝かせ、剣を肩に担いでいる。イシェはため息をつきながら、小さな袋から古い地図を広げた。「いい加減にしろよ、ラーン。大穴なんて、ただの迷信だ」
そこに、黒ずんだマントを羽織ったテルヘルが姿を現した。氷の刃のような視線で二人を見据える。「準備は整ったか?今日は私が目標の遺跡を決めた。古代ヴォルダン遺跡だ。そこには我々が求めるものがある」
イシェはテルヘルの言葉に一瞬、背筋を凍らせた。古代ヴォルダンの遺跡は危険な場所として知られていた。噂では、ヴォルダンがかつてそこで行っていた禁忌の儀式の名残が、今もなお遺跡の中に潜んでいるという。
ラーンは興奮気味に剣を抜き、テルヘルに近づいた。「よし、行こう!大穴だ!いや、今回はヴォルダンだ!伝説の秘宝を手に入れるぞ!」
イシェはラーンの背中に手を伸ばそうとしたが、もう遅かった。ラーンはテルヘルの後を歩きながら、Already I'm feeling lucky!と叫んでいた。イシェは深くため息をつきながら、二人についていくことにした。
彼らは日暮れまでに遺跡の入り口に到着した。巨大な石造りの門が、まるで獣の口のように開いていた。ラーンは興奮を抑えられず、門をくぐり抜けようとした。
「待て!」イシェはラーンの腕をつかんだ。「何かおかしいぞ、この場所には…」
その時、地面が激しく揺れた。石畳から黒い霧が立ち上り、不気味な光が辺りを照らした。ラーンの顔は恐怖の色に変わった。イシェは振り返った。後ろからゆっくりと、巨大な影が迫っていた。
「これは…!」テルヘルは目を丸くした。その影は、古代ヴォルダンの儀式で召喚されたという、伝説の怪物だった。