ビレーの朝は、いつも通り陽光と埃っぽさで始まった。ラーンは寝起きの伸びをしながら、イシェが持ってくる朝食をぼんやりと眺めていた。「今日はどこ行くんだ？」イシェの問いかけにラーンは「ふわり」と答えた。
彼は昨日テルヘルから渡された地図を指差した。地図には、ビレーから少し離れた場所に位置する遺跡が記されていた。そこには、かつて古代文明の人々が残したという「空飛ぶ石」と呼ばれる遺物があるという噂があったのだ。「もしかしたら、あの石が…」ラーンは目を輝かせた。「ふわりと、大穴になるかもな！」
イシェはため息をついた。「また夢見てる。あの石なんてただの伝説だろうよ」。しかし、ラーンの熱気に押されるように、結局は準備を始めることになった。三人はビレーの街を後にし、遺跡へと向かう道へ足を踏み出した。
道のりは険しく、日差しは容赦なく照りつける。イシェは水筒から水を一口飲んだ。「今日は暑いな…」と呟いた。「ふわりと涼しい場所があればいいのに」
ラーンの後ろ姿を見つめるイシェの視線は、遠くを飛んでいく鳥を追いかけるように空高く伸びていった。いつかあの鳥のように自由に羽ばたきたい、そんな希望が胸の中で小さく揺れているような気がした。
遺跡に到着したのは夕暮れ時だった。「ふわり」とそよぐ風だけが彼らの前に立ちはだかる。遺跡は朽ち果てた石造りの建物群で、静寂に包まれていた。ラーンの足取りは軽快に、イシェの足取りは慎重に、そしてテルヘルは常に周囲を見回しながら進んでいた。
日が沈み始めると、遺跡の影が長くなり始めた。「そろそろ入ろうか」テルヘルが言った。「ふわりと、何かが起こる予感がする」。ラーンの胸を躍らせるような言葉だった。