「よし、今回はあの崩れた塔だ。地図によると、奥にある部屋には何かが埋まってるとか。」ラーンは目を輝かせた。イシェはため息をつきながら地図を広げた。
「また、そんな曖昧な情報に飛びつくんだね。あの塔は危険だって聞いたぞ。罠が仕掛けられてるとか」
「大丈夫だ!俺が先頭を切って開拓するから。お前らついてくるだけだぞ!」
ラーンの豪快な笑いに、イシェは苦笑した。いつも通り、ラーンの計画性のない行動に巻き込まれるのだ。だが、彼と過ごす日々は退屈しない。
崩れかけた塔の入り口で、テルヘルが待っていた。「準備はいいか?」彼女は鋭い眼光でふたりを見据えた。「今回は特に注意が必要だ。ヴォルダンからの情報では、この遺跡には強力な魔物が封印されているという。」
ラーンの顔色が少し曇ったが、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。「大丈夫だ!俺たちに魔物なんて怖くないぞ!」
イシェは彼をじっと見つめた。ラーンの強さは本物だが、彼の無茶な行動に巻き込まれると、いつも自分が不安になる。でも、そんな彼だからこそ、イシェは彼を信じているのかもしれない。
塔の中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。足元の石畳は崩れかけており、一歩一歩が慎重を要した。ラーンは先頭を歩き、剣を構えながら進んでいく。イシェは彼をじっと見つめながら、後ろからついていった。
「何かいるぞ…」テルヘルが呟いた。
すると、壁の奥から、不気味な音が聞こえてきた。それはまるで、獣の唸り声のようだった。ラーンの表情が硬くなった。「魔物か…。」
イシェは緊張した。ラーンの言葉通り、この遺跡には何かがいるようだ。そして、それは彼らにとって大きな脅威になる可能性があった。