ラーンの大振りの剣が石壁を粉砕した。埃埃舞う中、イシェは咳き込みながら「また無駄な動きをしたな。あの石には何も無かっただろう」と呟いた。
ラーンは肩をすくめて、「いや、もしかしたら奥に何かあるかもよ。ほら、この隙間からひらりとした光が漏れてるじゃないか」と、指さした先を覗き込んだ。イシェはため息をつきつつも、ラーンの後ろに回り込み、慎重に石を動かした。すると、そこには小さな金色の箱が落ちていた。「やっぱりな」とラーンは得意げに笑った。イシェは箱を持ち上げると、中に入っていたのは古びた鍵だった。
「なんだこれは…」イシェが鍵を手に取ると、突然空気が冷たくなった。背筋がぞっとするような感覚に襲われた。そして、壁の奥からかすかに声が聞こえた。「解放されし者よ、汝は我を目覚めさせに来たのか…」
ラーンは一瞬戸惑った後、「うわっ、なんか怖いな」と呟いた。イシェは鍵を握りしめ、冷静さを保とうとした。「この遺跡には何か危険なものがあるかもしれない。気をつけろ」とラーンに警告した。その時、壁一面にひび割れが走り、石が崩れ落ち始めた。
「逃げろ！」イシェの叫びとともに、三人は遺跡から一目散に逃げ出した。背後からは轟音と共に石砕き音が響き渡った。
テルヘルは、街の酒場で情報収集をしていた。彼女の耳には、ラーンとイシェが遺跡で何かを発見したという噂が入っていた。彼女は眉をひそめた。「まさか…」
その時、酒場に一人の男が入ってきた。彼はテルヘルの前に座り、「あの遺跡について教えてくれ」と言った。彼の目は鋭く、まるでテルヘルを見透かしているようだった。「君が探しているものと、私の望むものは同じだ」男はそう言った後、ひらりと口元に笑みを浮かべた。