ラーンの粗雑な斧の一撃が埃を巻き上げる。崩れかけた壁の向こうから、イシェが「待て!」と声を張り上げたのも後の祭りだった。石塵が落ちつく頃には、ラーンは既に崩れた壁の奥に立っていた。
「何だ、何かあったのか?」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。「言わんこっちゃない。あの壁、触ったらダメだって。」
「そんなの、遺跡探しの楽しみの一つだろ? 意外な発見があるかもしれないんだぞ!」
ラーンがそう言うと、崩れた壁の中から、ひょっこりと小さな木箱が現れた。イシェは眉をひそめた。「まさか…」
「ほら見ろ! 大穴だ!」
ラーンの目が輝き、箱を持ち上げた。しかし、その瞬間、箱から異様な光が放たれ、ラーンを包み込んだ。
「ラーン!」
イシェが駆け寄ろうとしたその時、光は消え、箱の中に何もなくなった。代わりに、ラーンの姿は消え、その場に奇妙な紋章が残されていた。
イシェは恐怖と怒りで震えた。「何があったんだ…」
その時、背後から声がした。
「面白いものを見つけたようだ。」
テルヘルが微笑みながら近づいてくる。彼女の瞳には、冷酷な光が宿っていた。