ラーンの鼻歌が、埃っぽい洞窟の奥深くまで響き渡っていた。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の背後にぴったりとついていった。「またあの歌か。一体いつになったら飽きるんだろう」と呟くと、ラーンは肩をすくめた。「な？いい歌だろ？遺跡に潜る時の気分を高めるのに最適なんだよ」。イシェはため息をつき、「気分を高めるどころか、かえって気を散らすだけだ」とつぶやいた。
彼らは、ビレーからほど近い遺跡の奥深くへと進んでいく。テルヘルが提供した地図によると、この遺跡にはかつて高度な文明が存在した痕跡が残っているとされていた。その遺跡で眠る財宝こそが、ラーンの「大穴」への夢を叶える鍵となるはずだった。
「ここだな」。テルヘルは、壁に沿って伸びる細い通路を示した。彼女の目は鋭く光り、緊張感が漂っていた。「この先には、目標の部屋があるはずだ」。イシェは地図を確かめながら、「確かにそうみたいだけど…」と呟いた。しかし、彼の言葉はラーンの耳には届かなかった。彼は興奮を抑えきれない様子で、剣を構えながら通路へと飛び込んでいった。
「待て！ラーン！」
イシェが叫んだが、ラーンの足取りは止まらなかった。彼の背中は、まるで勝利の女神に導かれるかのように、堂々と遺跡の奥へと進んでいく。イシェはテルヘルと目を合わせ、「またやっちまったな…」と苦笑した。テルヘルは深く頷き、静かに剣を抜いた。「準備はいいか、イシェ？」
イシェは小さく頷き、自分の daggers を握り締めた。二人は互いに視線を交わし、ラーンの後を追いかけるようにして、暗い通路へと足を踏み入れた。
その時、突然、洞窟の奥から不気味な音が響き渡った。それはまるで、獣の咆哮と人間の絶叫が混ざり合ったような音だった。ラーンは一瞬にして振り返り、顔色が青ざめた。「何だあの音…？」
イシェもテルヘルも、その音を聞いた瞬間、背筋が凍りついた。三人は互いに顔を合わせ、ひと息を挟んでから、再び剣を握り締め、進むことを決意した。