ビレーの tavern の薄暗い隅で、ラーンが酒を片手に豪語していた。
「おい、イシェ！ 次はあの古代都市の遺跡だ！ そこで眠ってる財宝なら、俺たちの人生が変わる！」
イシェは眉間にしわを寄せながら、ラーンの言葉を遮った。「またそんな話？ 遺跡探索は日々の糧を得るためのものだろ。大穴なんて夢物語だ。」
「いやいや、イシェよ！ 俺たちはいつか必ず大穴を見つける！」ラーンは熱く言ったが、彼の瞳には自信よりも、どこか不安げな光が宿っていた。
テーブルの端で静かに酒を飲んでいたテルヘルは、彼らのやり取りに冷ややかな笑みを浮かべていた。彼女はラーンの熱意とイシェの現実的な態度、そして二人の間に流れる微妙な感情に気づいていた。
「二人とも、もう少し冷静になるべきだ。」テルヘルが口を開くと、ラーンとイシェは沈黙した。
「私は、ヴォルダンとの戦いに必要な資金を手に入れるため、遺跡探索を続けている。それはお前たちにも同じ理由でやっているはずだ。大穴など夢を見るな。」テルヘルの言葉は冷たかったが、その目はどこか遠くを見つめていた。
ラーンとイシェは言葉を失った。テルヘルはいつもこうだった。目的のためには手段を選ばない、まるで氷のように冷たい存在だ。
「よし、次の遺跡は…」ラーンの声がかすれた。
テルヘルは立ち上がり、テーブルに一枚の地図を広げた。「ここだ。」
地図の上には、ひっそりと記された古代都市の名前があった。
イシェは地図をじっと見つめ、「本当にあの場所に行くつもりなのか？」と尋ねた。
テルヘルは頷いた。「はい。そこには、私が探し求めているものがある。」
ラーンの顔色が変わった。彼は何かを感じ取ったようだった。イシェもまた、テルヘルの言葉に隠された意味を察した。
「では、準備を始めよう。」ラーンは立ち上がり、剣を手に取った。イシェも深呼吸をして、テルヘルを見つめた。
彼らは三人は、ひっそりと遺跡へと向かった。彼らの背後には、ヴォルダンの影が長く伸びていた。