ビレーの tavern の薄暗い隅で、ラーンが酒をぐいっと飲み干した。イシェが眉間に皺を寄せながら、小さな声で「本当に大丈夫なのかい?あのテルヘル、何か企んでいそうじゃないか?」と尋ねた。ラーンの隣に座るテルヘルは、鋭い視線で一杯のワインを注ぎ、「心配しすぎよ、イシェ」と微笑んだ。「私は単に、この遺跡から必要なものを手に入れるだけ。あなたたちには報酬を与える約束をしたわ、それだけのことよ」。
ラーンはテルヘルの言葉に安堵した様子を見せたが、イシェは不安を拭い去ることができなかった。テルヘルはヴォルダンからの復讐を誓うと公言しており、その冷酷な眼差しからは何かを隠しているようだった。遺跡の地図を広げたテルヘルは、「次の目的地はここだ」と指さした場所を示した。そこはビレーから遠く離れた、地図に記されていない小さな洞窟だった。イシェは地図をひそかに確認し、その場所に記された奇妙な記号に心をざわつかせた。
ラーンはいつものように「よし、行こうぜ!」と立ち上がったが、イシェは彼の手を掴んで止めた。「ちょっと待った方がいいんじゃないか?何か変だな」。イシェの言葉にラーンは一瞬戸惑いを見せたが、テルヘルは不気味な笑みを浮かべて言った。「遅れるのはもったいないわ。さあ、準備を整えましょう」。
洞窟へと続く険しい山道を進むにつれて、イシェの不安は増していった。周囲の木々は枯れ果て、空には不吉な雲が渦巻いていた。ラーンの無邪気な笑顔は、イシェにはどこか不自然に思えた。テルヘルの目的は何なのか?そして、この洞窟には何が眠っているのか?イシェはひそかに、自分が巻き込まれる危険を恐れた。