「おいイシェ、この石、どうだ？」ラーンが興奮気味に、拳より少し大きい石を見せた。イシェは眉をひそめた。「ただの岩石じゃないか。また宝の夢でも見たのか？」ラーンの肩を軽く叩きながら言った。「今日はもう日が暮れるぞ。帰ろう」
「いや、待てよ。何か変だな…」ラーンは石をくるくると回し、表面のざらざらの部分に目を凝らした。イシェも、彼の真剣な様子を見て少し興味を持った。「どうした？」
「この模様…まるで、組み合わさって何かを形成しているみたいだ」ラーンは指で模様をなぞりながら言った。「もし、これが本当に何かの部品なら…」彼は興奮気味に目を輝かせた。「もしかしたら、あの伝説の…」
イシェはラーンの熱気に押されるように、石をよく観察した。確かに、表面には複雑な模様が刻まれており、いくつかの石を組み合わせることで何かが完成するような気がした。「でも、そんな貴重な遺物が見つかるわけないだろう」と冷静に言いながらも、どこか期待を感じていた。
その時、テルヘルが近づいてきた。彼女は二人が見つめている石を静かに見て、鋭い視線で分析するように観察していた。「これは…」テルヘルは少し驚いた様子を見せた。「これはヴォルダン軍の古い技術資料の一部かもしれない」
ラーンとイシェは息を呑んだ。ヴォルダンとは、エンノル連合にとって脅威の大国だ。その技術資料が遺跡に眠っているというのは驚きだった。
「もし、これが本当なら…」ラーンの目は輝きを増した。「ヴォルダンを倒すヒントになるかもしれない！」イシェも深く頷いた。三人は互いに顔を見合わせて、石の真意を解き明かす決意を固めた。
しかし、その夜、彼らは遺跡から脱出する際に、ヴォルダンの兵士たちに襲われた。テルヘルは冷静に剣を抜き、ラーンとイシェを後ろに守りながら戦った。激しい攻防の末、なんとか敵を撃退したものの、彼らの前に立ちはだかるのは、巨大な壁のようなヴォルダンの軍勢だった。
「逃げろ！この遺跡は危険だ！」テルヘルは叫び、ラーンとイシェに石を押し付けた。二人は迷わずに走り出した。振り返ると、テルヘルは一人で敵兵たちに立ち向かっていた。彼女の背中には、小さく輝きながら石が置かれているのが見えた。
「待て！」ラーンの叫びは風に消され、三人の運命はバラバラに散り散りになっていく。