ラーンが巨大な石碑の影から顔を上げた時、イシェは眉間にしわを寄せていた。「本当にここに眠ってるのか? この遺跡、もっと奥深くじゃないか?」
ラーンの胸は高鳴っていた。地図に記された「王家の墓」への道筋。テルヘルが持ち出した情報によれば、そこには古代文明の秘宝が眠っているという。だが、イシェの言葉通り、今の場所からは何も見つかっていない。「まあ、焦るなよイシェ。テルヘルも言ってただろ? この遺跡は複雑なんだって。」ラーンはそう言いながらも、心のどこかでイシェの不安に共感していた。
テルヘルは、いつも通りの冷静さで地図を広げた。「この石碑には何か刻まれているはずだ。探してみよう。」彼女の視線は鋭く、石碑をくまなく舐めるように見て回っていた。すると彼女は、石碑の側面に小さく刻まれた紋章を見つけ、満足げに頷いた。「ここにあった。これが王家の墓への鍵になるはずだ。」
イシェはテルヘルの言葉に少し安心したようだった。「よかった…」と呟きながら、石碑を指さし始めた。「この紋章の意味が分かれば、次の手がかりが見つかるかもしれない。」だが、ラーンの心には不安が残っていた。テルヘルが言う「鍵」とは一体何なのか? 彼女の真意は本当に遺跡の秘宝にあるのか?
その夜、焚き火の前でイシェはラーンにささやいた。「テルヘルが何か隠している気がする…」ラーンはイシェの言葉に頷く以外できなかった。テルヘルの目的はあくまで復讐だと信じているつもりだったが、どこかで彼女の言動に矛盾を感じていた。
次の日、彼らは石碑の紋章を元に遺跡の奥深くへと進んでいった。そこには、予想外のものがあった。それは、かつて王が愛したという伝説の女性像だった。その美しさは息をのむほどで、ラーンたちは思わず立ち尽くしてしまう。だが、イシェは何かを感じ取ったのか、不安な表情を浮かべていた。
「これは…?」イシェが呟くと、突然石像の目が光り始めた。そして、石像から冷たい風が吹き出し、ラーンたちは吹き飛ばされてしまった。
目を覚ますと、ラーンの目の前には見慣れない風景が広がっていた。そこは、遺跡とは全く異なる場所で、薄暗い森の中に巨大な石造りの建物があった。彼らはどこへ連れてこられたのか? テルヘルの真意は一体何なのか? そして、この森の奥深くに何が待っているのか?
ラーンは、胸を締め付ける不安を感じながら、立ち上がった。