朝の薄暗い空の下、ビレーの街並みがぼんやりと浮かび上がる。ラーンがイシェを起こす前に、もうテルヘルは準備を終えていた。いつものように、彼女は冷静に地図を広げ、今日の探索ルートを確認している。
「今日はあの遺跡の奥深くまで行こう。古い記録によると、そこには未確認の遺物があるらしい」
テルヘルの言葉にラーンはいつものようにワクワクした顔をする。イシェはため息をつきながら、準備を始める。いつもより少し早く出発するようテルヘルが言ったのだ。理由は聞かなかったが、何か特別なことがありそうな予感がした。
ビレーの街を出ると、太陽がゆっくりと空高く登り始めた。野原を横切る風は心地よく、ラーンの背中に力強さを与える。イシェは小さくため息をつきながら、歩き続ける。いつもより早く出発したことで、いつものように、ラーンとテルヘルに置いていかれそうになる。
遺跡の入り口に到着すると、ラーンはいつも通りの勢いで中へ飛び込んだ。イシェはテルヘルを振り返り、少しだけ頷く。テルヘルも小さく頷き、ゆっくりと遺跡の中へと足を踏み入れた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っている。石造りの通路は崩れかけていて、足元には注意深く進まなければならない。ラーンは先頭を走り、イシェとテルヘルは少し遅れてついていく。
しばらく歩くと、前方に大きな部屋が現れた。中央には巨大な石柱がそびえ立ち、その周りには奇妙な模様が刻まれていた。
「これは…！」
イシェの声を聞き、ラーンとテルヘルも部屋の中心へと近づく。石柱の表面には複雑な文様が刻まれており、まるで生きているかのようだった。
「これは…古代の文字かもしれない…」
テルヘルはゆっくりと石柱に触れ、その表面を撫でた。すると、石柱から淡い光が放たれ、部屋全体を明るく照らした。
イシェは目を丸くして驚いた。ラーンも思わず息をのんだ。テルヘルは冷静に、石柱の文様を眺めている。
「これは…」
テルヘルはしばらくの間沈黙し、そしてゆっくりと口を開いた。
「これは…古代文明が残したメッセージかもしれません」