ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが大きなmugを空にしてはため息をついた。「また外れだって?」イシェが眉間に皺を寄せながら言った。「そうだな、いつも通りだ。この遺跡は本当に何もないのかもしれない」。ラーンの視線は、かすかに揺らめく炎の中で、テルヘルの方へ飛んだ。「あの日、お前が言ってたように、ヴォルダンに奪われたものがあるって…」。
テルヘルは静かに酒を一口傾け、「そうだな。だが、そのために必要なものは、遺跡の中にあるはずだ」と答えた。彼女の瞳には、深い影が宿っていた。ラーンは、その瞳の奥底に見え隠れする「ねっとりとした」憎しみに、少しだけ怯えるのを感じた。「よし、また明日行こうぜ」。ラーンの言葉にイシェはため息をつきながら頷いた。
次の日の朝、三人はビレーから少し離れた遺跡に向かった。湿った空気の中に漂う、土と石の匂いは、いつもより「ねっとりとした」重みを感じさせた。「ここだ」。テルヘルが立ち止まり、指を差し示す。「この遺跡は、ヴォルダンが何か隠した場所だと確信している」。イシェは不安げに周囲を見回した。遺跡の入り口には、ひび割れた石版があり、そこに奇妙な文様が刻まれていた。「ねっとりとした」黒さを持つその文様は、まるで生きているかのように感じられた。
ラーンが剣を抜いて入り口へ近づこうとしたその時、地面が激しく震えた。崩れ落ちた石版の下から、不気味な光が漏れてきた。イシェの顔は蒼白になった。「何かが…」。その瞬間、遺跡の中からは、唸るような音が響き渡り、三人は息を呑んだ。
「行くぞ!」テルヘルが叫び、剣を抜いて遺跡へ飛び込んだ。ラーンとイシェも後を追うようにして中へと入った。彼らの前に広がるのは、暗くて湿った地下空間だった。壁には奇妙な模様が刻まれており、天井からはしずくがゆっくりと落ちていた。空気は「ねっとりとした」重苦しさで一杯だった。
すると、奥から不気味な笑い声が聞こえてきた。「ようこそ、ヴォルダンの秘宝へ」。影の中から、黒いローブをまとった男が現れた。彼の目は、まるで燃えるような赤い光を放っていた。「お前たちは、この遺跡の真の姿を知ることになるだろう…」。男はゆっくりと近づいてくる。ラーンは剣を構え、イシェは緊張した表情で後ろに下がった。テルヘルは冷静に男を見つめていた。彼女の瞳には、燃えるような闘志が宿っていた。「ヴォルダンへの復讐は、ここで終わらせる!」。