「おい、イシェ、待てよ！」ラーンの豪快な声に、イシェは小さくため息をついた。「また迷子になるのかい？」
「違うんだ！いいもの見つけたんだ！」ラーンは興奮した様子で、崩れかけた石の壁を指差した。そこには、奇妙な模様が刻まれた金属製の箱が埋まっているように見える。「これは一体なんだ？宝箱かな？それとも…」
イシェは慎重に箱の様子を確認する。「確かに珍しいものだけど、触る前に確認すべきことがあるわ」彼女は懐から小さな道具を取り出し、箱の表面を丁寧に調査した。「この模様…見たことあるような…」
その時、テルヘルが背後から近づいてきた。「何だ？何か見つけたのか？」
イシェはテルヘルに発見を報告し、模様について言及した。テルヘルは真剣な表情で箱を見つめ、「これはヴォルダン遺跡のものかもしれない」と呟いた。
「ヴォルダン遺跡…」ラーンは一瞬黙り込んだ後、興奮した様子で言った。「よし！じゃあ、開けてみようぜ！」
イシェはためらいながらラーンの腕を掴んだ。「ちょっと待った！ヴォルダンの遺跡は危険な場所だ。罠が仕掛けられているかもしれないし…」
「大丈夫！俺たちにはテルヘルがいるだろ？彼女に任せればなんとかなるさ！」ラーンは自信満々に言った。
テルヘルは少し苦笑いしながら、箱の開け方を指示した。慎重に鍵を開けていくと、箱の中には古い地図と、見慣れない金属製の石が納められていた。「これは…」テルヘルは地図を広げ、その内容を真剣な表情で見つめた。
「どうだ？何かわかったのか？」ラーンは期待に胸を躍らせていた。
テルヘルは深く息を吸い、「この地図…ヴォルダンとエンノル連合の国境付近にある、未確認の遺跡を示しているようだ」と告げた。「そして、この金属製の石は…」彼女は石を手に取り、目を細めた。「これは…もしかしたら、伝説の『賢者の石』かもしれない」
ラーンの顔は驚きで真っ白になった。「賢者の石…？本当に？」
イシェは冷静に考えようと努めた。「でも、なぜヴォルダンがこんな場所に遺跡を隠していたのか？そして、なぜテルヘルはこの地図を知っているのか…」
テルヘルは深く頷き、「それは…まだ分からない」と答えた。しかし、彼女の瞳には、激しい決意が燃えていた。
「この地図を頼りに、ヴォルダンの秘密に迫ろう。そして…」彼女は言葉に詰まった。「そして、いつか必ず復讐を果たす」