ビレーの薄暗い酒場に、ラーンとイシェが戻ってきた。日中の遺跡探索は、いつものように空振りに終わった。イシェは疲れ切った様子で、テーブルに顔を伏せた。
「また何も無かったのか?」
ラーンの背後から、冷めた声が響く。テルヘルだ。彼女の鋭い視線が二人を貫いていた。
「そうだな。今日は特に何も見つからなかった」
ラーンが肩をすくめた。イシェは何も言わず、杯を傾けた。
「無駄な時間だ。あの遺跡には何かあるはずだ。以前の記録には、古代の王家の墓があると記されていたはずだ」
テルヘルはテーブルを叩きつけ、強い意志を表明した。ラーンとイシェはお互いの目を見合わせた。テルヘルの執念は、日増しに強くなっているように感じられた。
「あの遺跡は危険だ。罠が仕掛けられているかもしれない」
イシェが慎重に口を開いた。「無理な探索は避けよう」
「臆病者め!」
テルヘルは怒りを露わにした。「あの遺跡には、ヴォルダンを滅ぼす鍵があるはずだ。私は決して諦めない」
ラーンの心には、複雑な感情が渦巻いた。テルヘルの復讐心を理解できる部分もある。だが、イシェの言葉にも一理あった。危険な探検に巻き込まれるのは避けたい。
「よし、わかった。もう一度あの遺跡に挑戦するぞ!」
ラーンは意を決したように言った。イシェは驚きの表情を見せたが、ラーンの決意を覆すことはできなかった。テルヘルは冷たい笑みを浮かべた。
「そうすればいい。君たちが私の復讐の道具になるのだ」
三人は再び遺跡へと向かった。彼らの背後には、ヴォルダンとの因縁と、彼らを繋ぐ不可解な「つながり」があった。