「おい、イシェ、またあの遺跡か?」
ラーンが眉間にしわを寄せて辺境の街ビレーを見下ろす。イシェはいつものように彼の肩越しに地図を広げていた。
「そうだな、あの遺跡にはまだ探検してなさそうな場所がある。テルヘルも興味を示しているようだ。」
イシェは冷静に答えるが、ラーンの顔色は険しかった。彼にとって遺跡探索は宝探しであり、冒険であるはずなのに、最近はテルヘルの目的のために、まるで使い走りのように扱われているような気がしていた。特にこの近頃、テルヘルが持ち出す遺跡はどれもヴォルダンと関係があるらしい、危険な場所ばかりだった。
「ちっぽけな報酬で命張るほどのもんじゃないだろう…」
ラーンは呟いた。イシェは小さくため息をつきながら、地図をしまう。
「ラーン、僕たちも何かしらの目標を持っているはずだ。テルヘルを利用して、いつか自分の夢に近づけるチャンスかもしれない。」
イシェの言葉が少しだけラーンの心を和らげた。確かに、今はちっぽけな報酬で命を張っているように思えるが、いつか大きな宝を手に入れるために必要なステップなのかもしれない。そう信じることで、ラーンは再び希望を見出すことができた。
「よし、わかった!イシェ、今日も俺たちを導いてくれ!」
ラーンはいつもの笑顔を取り戻し、イシェの肩を叩いた。二人は互いに信頼し合い、困難な状況にも立ち向かう仲間だった。テルヘルがどんな目的で彼らを使い込んでいるのか、まだわからない。しかし、二人にとって大切なことは、自分たちの夢に向かって歩み続けることだった。