ラーンの鼻歌が洞窟内にこだました。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼の背後で足音を立てて進む。
「本当にここでいいのか？ この遺跡の情報源なんて怪しい噂話に過ぎないんじゃないか？」
ラーンは振り返り、陽気に笑った。「大丈夫だ、イシェ！ 今回は大穴が見つかる予感がするんだ！」
彼は巨大な石棺を指差した。その表面には複雑な模様が刻まれており、かすかに光り輝いていた。
「ほら、見たか？ この輝き！ きっと古代の王族のものに違いない！」
イシェは懐疑的な目を向けた。「王族の遺物なんて、ヴォルダンが欲しがるようなものじゃないのか？」
ラーンの笑顔が一瞬曇った。だがすぐに元に戻り、「そんなこと気にしないんだ！ 我々には我々の夢がある！」と豪語した。
その時、後ろから冷たすぎる声が響いた。「夢か。面白い話だ」
テルヘルが二人をじっと見つめていた。彼女の瞳は氷のように鋭く、その視線はラーンの陽気な態度を一瞬で凍りつかせた。
「私は夢ではなく、現実を手に入れに来た」と彼女は言った。その言葉には、ヴォルダンに対する復讐心がにじみ出ていた。「この遺跡から、私が必要なものを見つけ出すのだ」
イシェはテルヘルの言葉に背筋が寒くなった。ラーンの無邪気な夢とは対照的に、彼女には何か冷酷な目的があるように思えた。
「よし、早速中を見てみよう！」とラーンは石棺に手を伸ばした。だが、その瞬間、石棺の蓋が突然音を立てて開いた。そこから放たれたのは、不気味な黒い煙だった。
煙が渦巻く中、ラーンの顔は青ざめた。イシェは恐怖で言葉を失い、テルヘルは冷静さを保ちながら剣を抜き取った。
「これは…まさか…」
イシェの言葉は途中で途絶えた。黒い煙の中から、巨大な影がゆっくりと姿を現したのだ。その姿は、まるで悪夢から抜け出したかのような grotesqueness であり、彼ら三人の前に立ちはだかった。