「おいイシェ、今日は俺が先頭だぞ！」
ラーンがいつものように豪語した。イシェはため息をつきながら、彼に続くように遺跡の入り口へと歩みを進めた。テルヘルは後ろから二人をじっと見つめていた。
「今日の目標はあの奥にある部屋だ。情報によるとそこには未開の通路があるらしい。もし、そこで何か貴重な遺物が見つかれば…」
テルヘルの言葉がラーンの耳に届くと、彼の目は輝きを増した。「そうか！ついに大穴を見つけるチャンスか！」
イシェはそんな彼を横目に、遺跡内部の様子を確認しながら慎重に足を運んだ。遺跡の壁には奇妙な模様が刻まれており、時折不気味な音が響き渡る。
「よし、準備はいいぞ！」
ラーンの掛け声と共に、彼らは奥へと進んでいった。通路は狭く、天井からは鍾乳石がぶら下がっていた。イシェは足元を注意深く見て進んだが、ラーンはまるで遊んでいるかのように軽快に歩を進めていた。
「おいラーン、ちょっと待てよ！」
イシェの呼びかけにも関わらず、ラーンの足取りは止まらない。彼は興奮した様子で、通路の壁にある模様を指さしていた。
「見てイシェ！この模様、どこかで見たことあるぞ！」
「そんな…」
イシェが言いかける前に、床から突然何かが噴き出した。それは粘り気のある黒い液体のようであり、ラーンの足を直撃した。
「うわっ！」
ラーンは悲鳴を上げながら後ずさりした。黒い液体は床に広がり、不気味な音を立てながら煙のように蒸発していった。
「何だこれは…？」
イシェが恐る恐る近づいてみた。すると、その液体の跡には奇妙な模様が残されていた。それはまるで、ラーンが指さした壁の模様と繋がっているように見えた。
「まさか…」
イシェは言葉を失った。その時、後ろからテルヘルの冷たい声が聞こえた。
「面白い発見ですね。この遺跡は予想以上に複雑なものかもしれません」
彼女の瞳には、どこか楽しげな光が宿っていた。ラーンのたわむれな行動が、思わぬ収穫をもたらしたのだ。