ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑う。イシェは眉間に皺を寄せながら彼の肩を叩き、「また大口叩いてるじゃないの。あの遺跡で財宝が見つかるなんて、誰が信じるんだよ?」と叱る。ラーンの目は輝き、「今回は違うって!あの古びた地図には確かに記されてたんだろ?俺たちは必ず大穴を見つける!」と、まるで確信があるかのように言った。イシェはため息をつく。「地図なんて、何百年も前のものじゃないか。今はもう何も残っていないだろう」
その時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女の鋭い視線は、ラーンとイシェに釘付けになった。「準備はいいか?今日は本物の遺物がある遺跡だ。失敗は許されない」と、彼女は冷たく言った。ラーンの顔には、興奮と期待の色が浮かび上がる。「よし!行こうぜイシェ!」ラーンの声は、ビレーの酒場全体に響き渡った。イシェはテルヘルの冷たい視線を感じながら、小さく頷いた。
遺跡の入口では、見慣れないほど深い闇が広がっていた。ラーンは剣を構え、イシェは慎重に周囲を見回した。「何か感じる…」「何を感じるんだ?」ラーンの声が震える。イシェは首を振った。 しかし、その時、地面がわずかに沈み込み始めた。
「あれ?」ラーンの言葉が途絶えた。彼の足元から、まるで水の中に足を踏み入れたような感覚がする。 イシェが叫んだ。「ラーン!危ない!」だが遅かった。ラーンの体は、急速に砂の中に引きずり込まれていった。イシェは必死に手を伸ばしたが、届かない。
「ラーーン!」イシェの叫びが、深い闇に消えていった。テルヘルは冷静に状況を分析し、地図を広げた。「ここには…記されていなかったはずだ…」彼女は呟きながら、近くの岩場から小さな石を取り出した。石を地面に投げ入れると、わずかに光り始めた。
「これは…何か特別な場所なのかもしれない」テルヘルの目は、闇の中に光を宿すように輝いていた。だが、その輝きは、ラーンの安否よりも、遺跡の秘密に対する興味の方が強かった。
イシェはラーンを助けようと必死に砂に飛び込んだが、深い闇と重たい空気だけが彼女を待っていた。彼女の心には、希望の光が徐々に失われつつあるのを感じた。そして、同時に、自分自身にも「たるみ」があることに気づいた。