ビレーの薄暗い酒場の一角で、ラーンはイシェの眉間にしわが寄るのをじっと見ていた。イシェはテルヘルからの依頼内容を精査しているようだが、その表情はいつもより曇っている。
「どうしたんだ、イシェ?またテルヘルの要求が難題か?」
ラーンがそう言うと、イシェはため息をつきながら紙切れをテーブルに置いた。そこには、複雑な地図と記号で埋め尽くされた遺跡の図面が広がっていた。
「今回は特に厄介なんだ。テルヘルによると、この遺跡はヴォルダン軍が以前調査していたらしい。しかも、彼らは何か危険な物体を発見したという噂もあるんだ。」
イシェの言葉にラーンの心はそわそわと躍り始めた。ヴォルダン軍が関与しているということは、この遺跡には通常以上のリスクが伴うということだ。だが、同時に、大きな報酬も期待できる可能性もある。
「危険ならやめるべきじゃないか?」
イシェの懸念を察したラーンは、そう言った。しかし、その言葉は彼の口から出た瞬間、自分の意思とは裏腹に、どこかでそわそわと興奮する感覚を抑えきれなかった。
イシェはラーンの顔色を見つめながら、ゆっくりと言った。
「でも、テルヘルは報酬を大幅に増やしたんだ。それに、あの遺跡には、私たちが探している『大穴』のヒントが隠されているかもしれない。」
イシェの言葉に、ラーンの胸に熱いものが込み上げてきた。大穴。それは彼の人生を彩る夢であり、彼らを導く羅針盤のようなものだった。そわそわと高鳴る心の中で、ラーンは決意した。危険な遺跡だとしても、彼らは行くべきなのだ。