ビレーの街を包むそよ風が、ラーンの寝癖をなでつけた。太陽の光が差し込む窓から、イシェが持ってきた朝食の匂いが漂ってくる。いつも通り、イシェは小まめに準備をしている。ラーンは「今日はいい日になりそうだな」と呟きながら、テーブルに置かれたパンに手を伸ばした。
「今日の遺跡は、あの山のふもとにあるって聞いたんだ。そよ風が通って気持ち良さそうだろ」
イシェは眉をひそめた。「また無計画な…」と呟いたが、ラーンの笑顔を見て言葉を飲み込んだ。「そうね、そよ風を感じながら探索するのは悪くないわ」
すると、扉が開きテルヘルが入ってきた。その鋭い視線は、いつも通り二人を貫くように冷たかった。「準備はいいか?今日は特に慎重に進まなければならない」
「ああ、わかってるよ」ラーンが軽く笑って言った。「そよ風に乗って、大穴が見つかるといいな」
テルヘルは少しだけ眉間に皺を寄せたが、何も言わずに外に出た。イシェはため息をつきながら、ラーンの後を追うように立ち上がった。
遺跡へと続く道は、日差しとそよ風に満ちていた。ラーンの背中は、いつも通り勇敢で無邪気だった。イシェは彼を少しだけ羨ましく思った。自分はいつまでも、現実の冷たい風の中にいるのだろうか。
遺跡の入り口に立つと、そよ風が冷たさを増していた。「ここには何かがいる気がする」イシェが呟いた。ラーンは剣を手に取り、テルヘルと共に警戒を強めた。
遺跡の中は暗く、静寂だった。そよ風も届かず、埃が舞い上がっていた。ラーンの足音だけが響き渡る。突然、壁から何かが飛び出した。ラーンが剣を振り下ろす。
激しい戦いが始まった。ラーンの力強さとテルヘルの冷静な判断力で、なんとか危機を乗り越えることができた。イシェは、そよ風のように吹き抜けるようなスピードで敵をかわし、指示を出した。
激しい戦闘の後、遺跡の奥深くから、不思議な光が放たれた。そこには、かつて誰かが残した宝箱があった。そよ風が吹き込み、宝箱の蓋を開き始めた。
その瞬間、イシェは確信した。この冒険は、ただの遺跡探索ではない。何か大きなものに触れる予感がする。そして、そよ風のように、未来を切り開いていく力を感じた。