ラーンの太い腕が石を抉り落とす音だけが、遺跡の静寂を破っていた。埃っぽい空気を吸い込みながら、イシェは彼を横目にため息をついた。「また大穴だなんて、いつまでそんな夢見るんだい?」
「いつか必ず見つけるさ!そっくりな財宝が山ほど詰まった大穴を!」ラーンは目を輝かせ、汗で濡れた額を拭った。「そうすればイシェも苦労しないだろう?ビレーで好きなだけパンが食えるぞ!」
イシェは苦笑した。ラーンの楽観的な性格にはいつも呆れていたが、彼の情熱に引っ張られるように、今日も遺跡を探検していた。
その時、テルヘルが声色を硬くして言った。「待て。何か感じる。」彼女は鋭い視線で周囲を見回し、手元の地図を広げた。
「ここには記されていない通路がある…そっくりな設計の遺跡で見たことがあるぞ…」
ラーンの顔色が変わった。「まさか…あの噂の…」
「そう。ヴォルダンが秘匿している遺跡だ。危険だが、そこには我々が求めるものがあるはずだ。」テルヘルの瞳に冷酷な光が宿った。復讐への執念が、彼女を前に進ませる。
イシェは不安を感じながら、ラーンの顔を見つめた。彼の表情からは、いつもの陽気さは消え、緊張と興奮が入り混じっていた。「そっくりな場所…一体どんな危険が待ち受けているのだろう…」
三人は互いに意思を伝え合うように頷き、未知なる通路へと足を踏み入れた。