ビレーの朝の光は、まだ冷たかった。ラーンは、イシェが持ってきた温かいスープを一口飲み干しながら、今日の遺跡について熱く語っていた。
「今回は絶対に大穴だ!あの地図、よく見ると、古代の王家の墓を示しているんじゃないか?中に入ったら金銀財宝で溢れかえってるぞ!」
イシェは眉間に皺を寄せながらスープを飲んだ。「またそんな話?ラーン、あの地図はただの羊皮紙に描かれた絵でしょ。何の保証もないわ」
「大丈夫だ、イシェ。俺の直感が言ってるんだ!」ラーンは自信満々に拳を握りしめた。イシェは彼の熱意に押されながらも、内心では懐疑的だった。
ビレーのせせらぎが流れる音を聞きながら、イシェはいつも通りの不安を感じた。ラーンの計画にはいつも何かが欠けていて、危険ばかりがつきまとってくる。でも、彼と一緒にいると、どこか安心できるものがあった。
その時、テルヘルがやって来た。「準備はいいか?今日は時間がない。ヴォルダンとの戦いは今にも始まる。遺跡からの出土品は、そのための資金だ」
テルヘルの言葉に、ラーンは闘志を燃やし、イシェも覚悟を決めた。三人はビレーの街を後にし、山道を登り始めた。
道の途中のせせらぎの水で顔を洗うイシェの横をラーンが通り過ぎていく。「今日は必ず大穴を見つけるぞ!」と彼は叫んだ。イシェは小さく微笑んで頷いた。彼には、ラーンの夢を叶えたいという気持ちもあったのだ。