ラーンが遺跡の入り口で息を弾ませていると、イシェは眉間に皺を寄せた。「またか？ラーン、本当にここに宝が眠っていると思うのか？」
ラーンの豪快な笑いが洞窟内にこだました。「もちろん！あの地図には間違いなく書かれていたぞ！今回は必ず大穴が見つかる！」
イシェは地図をもう一度確認した。確かに、奇妙な記号がびっしりと書き込まれた古い羊皮紙には、この遺跡の奥深くで巨大な宝が眠っているという記述があった。しかし、イシェは何かが amissだと感じていた。
「地図の真偽はともかく、ヴォルダンとの国境に近いこの遺跡を探索するのは危険だ。テルヘルに依頼したのはなぜ？彼女のことなら、もっと安全な遺跡を探せるはずなのに」
ラーンの顔色が一瞬曇った。「ああ、あの女のことか…彼女は俺たちが必要なんだ。俺たちの力が必要なんだ！」
イシェはラーンの言葉を信じられなかった。テルヘルは確かに強くて頭脳明晰だが、どこか冷酷で自分の目的のために手段を選ばない女性だった。なぜ彼女がラーンたちに執着しているのか、イシェには理解できなかった。
「よし！準備はいいか？イシェ、お前は後ろからついて来い！」
ラーンの興奮に押されるように、イシェも洞窟の中へ足を踏み入れた。暗い洞窟は湿った土と石の臭いで充満し、不気味な静けさが支配していた。
彼らは地図を頼りに奥へと進んでいったが、道中何度も迷宮のような構造に出くわした。イシェは地図に記されたシンボルと実物を見比べて確認しながら慎重に進むようラーンに促したが、ラーンはイシェの意見を無視して自分の直感で進もうとした。
そしてついに、彼らは広々とした空間にたどり着いた。中央には巨大な石碑がそびえ立ち、その周りを複雑な模様が刻まれた石柱が取り囲んでいた。
「ここに…！」ラーンは興奮を抑えきれず石碑に手を伸ばした。
しかし、その時だった。影から複数の黒いシルエットが現れ、ラーンを包囲した。彼らは鋭い牙と爪を持った獣人だった。
「敵だ！イシェ、逃げろ！」
ラーンの叫び声と共に戦闘が始まった。イシェは慌てて石柱の陰に隠れ、状況を把握しようと努めた。しかし、獣人の数は多く、ラーンは徐々に追い詰められていく様子だった。
その時、イシェは何かを察知した。獣人たちの動きが不自然で、まるで…まるで誰かの指示に従っているように見えたのだ。
イシェは恐怖を感じながらも、ある決断を下した。彼女は石柱から飛び出して、ラーンに向かって走り出した。
「ラーン！敵の狙いは俺たちじゃない！」
イシェの言葉にラーンは一瞬驚きを見せたが、すぐに理解した。彼は獣人たちに囲まれても、決して諦めることはなかった。そして、イシェと共に新たな戦いに挑もうとした。