ラーンが石を蹴飛ばすと、小石が空中に舞い上がり、一瞬の間宙吊りになったかのように静止した。イシェは眉間にしわを寄せていた。「またか?」とため息をつきながら、地図を広げた。「この遺跡の構造は複雑すぎる。あの大穴への入り口はどこにあるんだろう」
「おいおい、イシェ。そんな難しいこと考えないでよ」ラーンは笑い飛ばした。「いつか必ず見つかるさ。俺にはそう感じるんだ」彼の目は自信に満ち溢れていた。だがイシェは、ラーンの言葉の裏に隠された不安を感じ取っていた。
テルヘルは背後から「時間がない」と冷たく言った。彼女の鋭い視線は、まるで二人の背筋を貫くように感じられた。「大穴への入り口を見つけられなければ、我々の計画は破綻する」
ラーンの視線が揺らいだ瞬間、イシェは決意した。彼女は地図を握りしめ、「あの通路を試してみよう」と提案した。「あの崩れた壁の奥には空間があるはずだ。もしかしたら…」
「いいか?」ラーンがイシェに目を向けると、彼女の瞳に不気味な光が宿っていた。まるで何かをすり抜けるように、彼の視線をかわすように。
三人は崩れた壁に向かって進んだ。壁の隙間から差し込む光は、埃っぽい空気を照らし出すだけで、それ以上のものは何も見えず、先の見えない不安だけが彼らを包み込んでいった。イシェは小さく息を吸い込み、ラーンに視線を送った。彼の顔には緊張の色が浮かんでいたが、彼の瞳に宿る希望の光は、イシェにもわずかな勇気を与えた。
壁をすり抜けるように進む三人の影。その先に待っているものは何なのか?