ラーンが石の扉をこじ開けると、埃っぽい空気が彼らを包んだ。イシェが鼻をつまんで「また、この臭いね」と呟くと、ラーンは得意げに笑った。「ほら、探検だぞ!」
ビレーから少し離れた遺跡は、いつもより寒かった。すき間風だけが吹き込み、彼らの衣服を撫でるように冷たさを感じさせた。テルヘルは薄暗い通路を進むラーンの後を mengikuti し、「急がなくてもいいでしょう」と冷静に言った。
「宝探しの冒険だぞ!急いでいるんだ!」とラーンは言いながらも、足取りは重かった。イシェは彼の様子を見て、少し心配そうに言った。「何かあったのかい?」
ラーンは首を横に振った。「いや、なんでもない。」だが、彼の目はどこか暗く、いつもの明るさが欠けていた。
彼らは遺跡の中を進んでいくにつれて、壁に描かれた古びた模様が目に入った。イシェが壁の模様を指さして、「これは何か知っている?」と尋ねた。テルヘルは少し考え込んだ後、「ヴォルダンの紋章に似ている」と呟いた。「ここにはヴォルダン人が関わっていた可能性が高い。」
ラーンの表情が曇った。彼はヴォルダンを憎んでいた。彼の家族を奪い、故郷を焼き尽くした張本人だ。イシェはラーンの様子を見て、彼の過去を知っているテルヘルに「彼には何か事情があるのですか?」と尋ねた。
テルヘルは深く息を吸ってから、「ラーンはヴォルダンに復讐を誓っている」と答えた。イシェは驚いて「そんな…」とつぶやいた。ラーンの無邪気な笑顔の裏に、深い憎しみが渦巻いていることを初めて知ったのだ。
彼らは遺跡の奥深くへと進み、ついに宝箱を見つけた。ラーンの目は輝き、イシェも少し興奮していた。しかし、テルヘルは宝箱をじっと見つめた後、「これは罠だ」と警告した。
その瞬間、床から鋭い棘が突き上がり、ラーンはすんでのところでかわした。すき間風の中で、冷たい風が彼らを包み込んだ。イシェが「逃げろ!」と叫んだ時、後ろから影が迫ってきた。
戦いの火花が散り、遺跡に響き渡る剣の音が、すき間風のささやきを掻き消した。