ラーンが豪快な笑いを上げ、巨大な石扉を開けた。埃っぽい風が吹き込み、イシェは咳き込んだ。テルヘルは眉をひそめながら内部をくまなく見渡した。
「遺跡としては小規模だな。ここには何もない」
イシェはそう呟いた。ラーンの期待に反して、この遺跡からは bislang ほとんど何も見つからなかった。
「大丈夫だ、イシェ。まだ探せば何かあるさ!」
ラーンはそう言って、石柱に刻まれた奇妙な模様を指差した。だが、イシェは彼の無邪気な笑顔を見るのが辛かった。最近、彼らの仕事は貧乏くじばかりだった。遺跡の枯渇と、それに伴う報酬の減少は、ビレーの生活にもしわ寄せをもたらしていた。
テルヘルは鋭い目でラーンの表情を伺った。彼女は彼を「駒」と見ていたが、彼の楽観性にはどこか惹かれるものがあった。しかし、今はそんなことを考えてはいられない。ヴォルダンとの戦いを前に、彼女は結果を求めていたのだ。
「よし、ここで休憩だ。イシェ、お前は周囲を探し回れ。何か手がかりがあればすぐに知らせるんだ」
テルヘルはそう命じた後、ラーンの腕に手をかけた。
「お前と話をしたいことがある」
ラーンの顔色が一瞬曇ったが、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。
「ああ、もちろんですな、テルヘルさん」
イシェは二人が話すのを遠くから見つめていた。彼の心には不安が渦巻いていた。最近、ビレーでは様々な噂が流れていた。ヴォルダンとエンノル連合の緊張が高まり、戦争の可能性もささやかれているのだ。そして、それは彼ら遺跡探索者の仕事にも影響を及ぼす。
イシェは深くため息をついた。この遺跡に何か見つかったとしても、もうビレーの未来を変えることはできないかもしれない。