ラーンが、埃っぽい tavern の扉を開けた瞬間、イシェは眉間に皺を寄せた。「また騒がしいね」。賑やかな酒場内では、粗野な笑い声が響き渡り、テーブルの上で酒を酌み交わす男たちの喧噪が耳をつんざく。ラーンはそんな雰囲気を全く気にすることなく、にこやかに店主に声をかけた。「いつものやつ、二杯!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの後についていく。いつも通りの光景だが、今日のラーンの様子には、どこか落ち着きのなさがあった。彼の手が、剣の柄に何度も触れていることにイシェは気づいた。
「何かあったのかい? 」イシェが尋ねると、ラーンは顔をしかめて答えた。「ああ、あの遺跡のことだ。テルヘルからまた手紙が届いたんだ」。イシェは、テーブルの上に置かれた封筒をじっと見つめた。テルヘルの依頼はいつも高額だった。だが、その代償として、危険な遺跡に挑まなければならないことも多かった。
「今回は何の遺物か?」イシェが尋ねると、ラーンは眉間に皺を寄せながら言った。「具体的には知らされていない。ただ、テルヘルは『大穴』につながるかもしれないと興奮していた」。
イシェの心はざわついた。大穴。それは、伝説的な遺跡で、莫大な財宝や古代の技術が眠っていると言われる場所だ。だが、同時に多くの犠牲者を出した危険な場所でもあった。ラーンは、その言葉を聞いて目を輝かせていた。「もし本当に大穴なら…」
イシェはラーンの顔を見て、彼の熱意を理解する。だが、同時に、彼を危険に巻き込むことになるかもしれないという不安も感じていた。イシェは深くため息をつき、「わかった。今回は俺たちも行く」。
ラーンは満面の笑みを浮かべて、イシェの肩を叩いた。「よし! これで準備は万端だ!」彼は立ち上がり、 tavern を出ていくと、勢いよく街へと歩き出した。イシェは彼に後を追いかけながら、不安な気持ちを抱きつつも、どこか胸の高鳴りを抑えられなかった。