「よし、ここだ!」
ラーンが声を張り上げると、イシェはため息をついた。またしても、ラーンの直感に従って、見通しの悪い洞窟に足を踏み入れることになる。壁には湿った苔が生い茂り、足元には不安定な石ころが散らばっている。
「ラーン、本当にここに何かあると思うのか? いつもこうやって希望を胸に抱いて遺跡に飛び込むけど…」
イシェの言葉はラーンの耳に入らなかった。彼は目を輝かせ、洞窟奥へと進んでいく。イシェは仕方なく、彼の後を追う。
テルヘルは後ろから二人を見つめていた。彼女の顔にはいつもの冷酷な表情が浮かんでいる。「あの男はいつまでこんな無茶を続けるつもりなのか…」彼女は呟いた。ラーンの行動は危険すぎる。だが、彼の持つ何か、ある種の熱量を彼女は必要としていた。
洞窟の中は暗く、じめじめしていた。ラーンの懐中電灯の光が壁を照らすと、そこには奇妙な模様が刻まれていた。イシェは眉をひそめた。「これは…何かしらの呪文なのか?」
「知らねえよ!」ラーンは興奮気味に言った。「とにかく、何かがあるはずだ!」
すると、洞窟の奥から音が聞こえてきた。かすかな、金属的な音。ラーンの表情が引き締まった。
「あれは…!」
彼は剣を抜くと、イシェに合図を送った。テルヘルも静かに手を構えた。彼らは慎重に進むと、洞窟の奥にある広間にたどり着いた。そこには、巨大な石棺が置かれていた。石棺の上には、複雑な模様が刻まれており、その中心には、赤い宝石が埋め込まれていた。
「わあ…」ラーンは目を丸くした。「これは…!」
イシェも思わず息を呑んだ。宝石の周りには、何かしらの力を感じることができた。
その時、石棺の上で、小さな動きがあった。まるで、何かが石棺の中でうごめいているかのようだ。
「何だ…」イシェは恐怖と興奮を同時に感じた。「あの石棺の中に…?」
ラーンの心臓は高鳴っていた。ついに、大穴が見つかったのかもしれない。しかし、その瞬間、石棺の蓋がゆっくりと開いた。そこから、黒曜石のような光沢を持つ巨大な手が出てきた。
「逃げろ!」
テルヘルの叫びが響き渡った。ラーンとイシェは一瞬遅れて、石棺から生み出された闇の存在に襲いかかった。