ビレーの街はずれの酒場で、ラーンが豪快に笑った。「よし、これで今日の酒代は確保だ！」
イシェがため息をついた。「いつも大穴を見つける夢ばかり見てるから、そんな簡単に稼げるわけないだろう。この前も偽の遺物にだまされたじゃないか。」
「まあ、でもあの時は運が悪かっただけだろ！いつか必ず掘り当ててやるよ、大穴を！」ラーンは胸を張ったが、イシェは彼の視線に嘘を感じていた。最近、ラーンの目はどこか曇っているように見えた。
その時、背後から声がした。「二人とも元気そうだね」
ラーンとイシェが振り返ると、テルヘルが立っていた。黒曜石のような瞳に、鋭い光が宿っている。
「今日は遺跡調査に行くのか？」テルヘルは静かに尋ねた。
ラーンは小さく頷いた。「ああ、新しい遺跡の情報が入ったんだ。今回は確実だぞ！」
イシェは不安を感じた。ラーンの目は輝いてはいるが、以前のように自信に満ち溢れているわけではない。何か隠していることがあるような気がした。
「では、準備ができたら案内しよう」テルヘルはそう言って、ビレーのざらついた石畳を歩き始めた。彼女の背中には、影が長く伸びていた。
遺跡入り口で、ラーンはイシェに囁いた。「今回は少し様子が変だな…テルヘルの目つきが鋭いし、何か企んでいる気がする」
イシェは頷いた。「私もそう思う。でも、彼女には何か理由があるはずだ。無理強いする必要はないだろう」
二人は遺跡へと足を踏み入れた。そこはかつて栄華を極めた文明の痕跡が残る場所だったが、今は崩れ行く石柱とざらついた岩で覆われていた。
テルヘルは遺跡の中央に立つ巨大な石碑を指さした。「ここに何かが隠されているはずだ。探せ！」
ラーンは剣を抜いて警戒し、イシェは慎重に周囲を観察した。遺跡内部は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。足元には鋭利な石が散らばっていて、一歩一歩が危険を孕んでいた。
ラーンの剣が石碑の表面に触れた瞬間、突然、地面が激しく振動し始めた。石碑から怪しい光が放たれ、遺跡全体を照らし出した。
「これは…！？」ラーンは目を丸くした。
その時、テルヘルは邪悪な笑みを浮かべて言った。「ついに、私の復讐が始まる時が来た…」