「おい、イシェ、これってどうだ?」ラーンが興奮気味に大きな石の破片を持ち上げた。イシェは眉間に皺を寄せて、その破片に刻まれた複雑な模様をじっと見つめた。「よくわからない… 何か記号みたいだけど、見たことのないものだわ」
テルヘルは冷静に言った。「古い言語の可能性もある。持ち帰るように」
ラーンの得意げな顔とは対照的にイシェは不安そうな表情を見せた。「でも、これって遺跡の奥深くで見つけたやつじゃない? あれから何か変だと思ってない?」
「変?」ラーンが首を傾げた。「別にいつもと変わらないだろ?」
イシェはため息をついた。ラーンの無頓着さに何度失望したことか。彼女は慎重に周囲を見回した。「あの、あのね… ここに来る途中、動物の足跡が見えなかった気がするんだけど…」
「ああ、そうだね」テルヘルが言った。「確かに不自然だ」
ラーンはイシェをちらりと見て、「心配するなよ。俺たちがいるだろ?」と自信げに笑った。だが、イシェは彼の言葉に安堵できなかった。
遺跡の奥深くへと進むにつれ、不気味な静けさが広がっていた。「さすが」と呟いたのはテルヘルだった。彼女の目は鋭く周囲を Scanning していた。何かを察知したのか、彼女はラーンとイシェに合図を送った。
その時、壁から突然黒い影が現れた。ラーンの剣が光り、イシェは素早く後退した。だが、その影はラーンの攻撃をかわし、彼に襲い掛かった。
「何だこれ!」ラーンは驚愕し、剣を振り下ろす。しかし、影は軽快に動き回り、ラーンの攻撃をことごとくかわす。「さすが」と呟いたのはイシェだった。彼女は冷静に状況を分析しながら、影の動きを探っていた。
その時、テルヘルが声を上げた。「あの石の破片だ! あれが鍵なのかもしれない!」
イシェは一瞬で理解した。影は石の破片に反応しているのだ。ラーンが石の破片を落とした瞬間、影は消えた。
「よかった…」イシェは安堵のため息をついた。だが、その安堵は長く続かなかった。なぜなら、この遺跡にはまだ多くの謎が残されていたからだ。