ラーンの大雑把な計画を聞いたイシェは眉間に皺を寄せた。「そんな無茶な…」。ビレーから南へ続く山脈を越えて、ヴォルダンとの国境近くにある遺跡を目指すというのだ。
「おいおい、イシェ。そんなに怖がるなよ。さざ波みたいに穏やかな景色を眺めながら、のんびり遺跡を探せばいいんだろ?」ラーンは陽気に笑った。彼の背中には大きな剣がしっかりと納まっている。
イシェはため息をつきながら、地図を広げた。「でも、あの遺跡はヴォルダンとエンノル連合の国境付近にある。危険すぎるわ。それに、あの遺跡はかつてヴォルダンの軍隊が調査したという記録があるのよ。何か罠が仕掛けられていてもおかしくない」。
「罠?そんなの俺たちの力に敵わないぜ!」ラーンは自信満々に言った。しかしイシェは彼の言葉に納得しなかった。「ラーン、私たちは遺跡探索者。冒険家じゃないんだ。危険を冒してまで大穴を探す必要なんてないわ」
そこにテルヘルが鋭い視線で二人を見下ろした。「時間がない。すぐに準備を整えなさい」。彼女は冷徹な声で言った。「あの遺跡には私が求めるものがある。どんなリスクも負う覚悟だ」
ラーンの顔色が変わった。「テルヘル、一体何を探しているんだ?」彼は真剣な眼差しで彼女を見た。
テルヘルは一瞬ためらった後、小さく頷いた。「それは…今は言えない。とにかく、お前たちを信頼している。危険を冒してでも、あの遺跡に足を踏み入れる必要があるのだ」
イシェはラーンの顔色を伺うようにテルヘルの言葉に耳を傾けた。彼女の言葉には何か隠されたものを感じた。まるで、さざ波の表面の下に潜む暗くて深い流れのようなもの。イシェは不安を感じながらも、ラーンと共に遺跡へと向かうことを決意した。