ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。イシェは眉間に皺を寄せていた。「また大穴の話か?」とため息をつき、ラーンの肩を軽く叩いた。「あの遺跡で、本当に何か見つかるのかね」。
ラーンは目を輝かせ、「必ず見つかるさ!いつかビレーを出て、もっと広い世界へ行くんだ。お前も一緒だぞ、イシェ!」。イシェは小さく頷くだけだった。ラーンの夢に付き合うのは楽しいが、現実的には遺跡探索で得られるのはわずかな金銭と、危険ばかりだった。
その時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女の鋭い視線は、店中の誰にも向けられなかった。「準備はいいか?」。その声は冷たく、しかしどこか切羽詰まっているようにも聞こえた。「今日の遺跡は…少し様子が異なるようだ」。
ラーンは興奮気味に、「何か珍しいものがあるのか?」と尋ねた。テルヘルは首を横に振った。「危険だ。噂によると、あの遺跡には…」彼女は言葉を濁し、ラーンとイシェを見つめた。「お前たちには、この仕事が…最後の機会になるかもしれない」。
イシェは不安を感じた。テルヘルの言葉に、何か不穏な予感がした。ラーンの顔色も少し曇り始めたが、「大丈夫だ」と自分に言い聞かせるように、笑顔を浮かべた。「俺たちは一緒に乗り越える!さあ、イシェ、行こう!」。
三人は遺跡へと向かった。夕暮れの薄暗い空の下、ビレーの街は遠くに見えた。ラーンの背中は小さく見えていたが、イシェは彼の後ろ姿に安心感を得ていた。しかし、テルヘルの言葉が頭から離れなかった。何か、大きなことが起きる予感がしたのだ。
ビレーの人々は、ささやかに噂を語り始めた。「あの遺跡には、呪いがある…」と。