ラーンの大雑把な剣さばきが埃を巻き上げながら遺跡の奥深くへと切り込んだ。イシェは眉間に皺を寄せながら、足元の崩れかけた石畳を慎重に確認した。「本当にここでいいのか、ラーン?あのこぼれ話を信じていいものか」
「ああ、大丈夫だ。昔、このあたりで採掘作業員が巨大な宝石を見つけたって話だろ?あの時の場所らしいぞ。ほら、あそこ!」
ラーンは興奮気味に、壁の奥まった部分を指差した。イシェはため息をつきながら、懐中電灯を照らした。「確かに壁面が変形しているようだけど…」
「よし、これで掘り当てたも同然だ!」
ラーンの手はすでに小さなつるはしで石を叩き始めていた。イシェは仕方なく、テルヘルに目を向けた。「何か情報を得ていたのか?」
テルヘルは薄暗い遺跡の奥深くを見つめながら静かに言った。「ヴォルダンには、このような遺跡に関する記録が数多く残っている。こぼれ話のような噂も、彼らにとっては貴重な情報源だったようだ」
イシェはテルヘルの言葉に少しだけ安心した。彼女の冷静な判断と知識は、ラーンの無茶な行動を支える頼りになる存在だった。
「よし、見つけた!」
ラーンの声に振り返ると、彼は興奮気味に小さな宝石を手に持っていた。しかしそれは、イシェが期待したような輝きのある宝石ではなく、ただの濁った石ころだった。ラーンの顔色が曇るのをイシェは見逃さなかった。
「こぼれ話には嘘もあるってものだ」とイシェは冷静に言った。「でも、諦めるのはまだ早すぎる」
イシェはテルヘルに視線を向けると、かすかに微笑んだ。「この遺跡には何かがあるはずだ。もっと深く探せば…」
テルヘルは、イシェの瞳に映る決意を感じ取った。彼女は小さく頷き、再び遺跡の奥へと足を踏み出した。三人の影が、埃と闇の中に消えていった。