ラーンが巨大な石の扉を押し開けると、埃っぽい空気が充満した内部へと続く階段が現れた。イシェが懐中電灯を点けると、壁には古びた絵文字が刻まれていた。
「これは...ヴォルダンで使われていた記号じゃないか?」
イシェの言葉にラーンの顔色が変わった。彼はこの遺跡はヴォルダンと何か関係があるとは考えていなかったのだ。テルヘルが雇ったのも、単なる日当稼ぎだと思っていた。
「まさか...こっそりヴォルダンの遺跡を探してたんじゃないだろうな?」
ラーンの視線はテルヘルに向けられた。彼女はいつも冷静沈着だが、どこか影を背負っているような気がした。テルヘルは静かに頷いた。
「この遺跡にはヴォルダンが失ったものがある。それを手に入れるために私はここに来た」
彼女の目は氷のように冷たかった。「そして、あなたたちにはその手伝いをしてもらうつもりだ」
ラーンは言葉に詰まった。イシェも驚愕の表情を浮かべている。二人はテルヘルの目的を知らずに遺跡探しの仕事を引き受けたのだ。だが、すでに遅すぎた。
「こっそり...ヴォルダンと戦うための鍵を探してるんだな?」
ラーンの fists が握りしめられた。彼は戦いを避けるタイプではないが、ヴォルダンとの関係は複雑だった。テルヘルは彼の過去を知らなかったはずだ。それでも、この遺跡には何か危険なものがあると感じた。そして、その危険は彼ら自身にも向けられるかもしれないのを感じていた。