「準備はいいか？」ラーンの粗い声とイシェの小さく頷く姿が、薄暗いビレーの tavern の片隅で揺らめくランプの火に映る。テルヘルは酒を一口飲み干した。「無駄な時間を過ごしたくないわ」と冷たい視線で二人を見据える。
遺跡探索はいつもこの３人で、いつも同じように緊張感漂う朝を迎える。ラーンはいつも通り無茶な計画を練り、イシェは眉間にしわを寄せて現実的な懸念を口にする。テルヘルは二人のやり取りを冷ややかに見守りながら、独自の目的を胸に秘めている。
今回は、ビレー近郊にある「忘れられた塔」と呼ばれる遺跡だ。言い伝えによれば、塔には古代文明の技術が凝縮された「水晶球」が眠っているという。ラーンは水晶球を手に入れれば大金持ちになれると目を輝かせ、イシェは慎重に地図を広げてリスクを分析する。テルヘルは水晶球に秘められた秘密に関心を抱き、その力を利用してヴォルダンへの復讐を果たすことを夢見ている。
「よし、行こう！」ラーンの号令と共に、３人は塔へと向かう。険しい岩肌を登り、崩れかけた石畳を慎重に進む。イシェは常に周囲を警戒し、ラーンは興奮気味に遺跡の壁画を指差す。テルヘルは静かに彼らを後ろから見守りながら、自分の目的を果たすための糸口を探している。
塔の中心部には、巨大な水晶球が安置されていた。その輝きは、まるで生きているかのように周囲を照らし出す。ラーンの目にはgreedyな光が宿り、イシェは慎重に球体の表面を調べ始める。テルヘルは水晶球のエネルギーを感じ取り、胸の高鳴りを抑えきれない。
その時、塔の奥底から不気味な音が響き渡った。石畳が崩れ、巨大な影が姿を現す。それは、遺跡を守る守護者と呼ばれる怪物だった。ラーンの剣が閃き、イシェは素早い動きで攻撃をかわす。テルヘルは冷静に状況を判断し、隙を狙って敵の弱点へ攻撃を加える。
激しい戦いの末、３人は守護者を倒すことに成功する。しかし、その代償としてイシェは重傷を負ってしまった。ラーンはイシェを抱き上げ、恐怖と怒りで震える。テルヘルは静かに水晶球を見つめ、自身の目的達成への執念を燃やす。
「お前は大丈夫だ」ラーンの声は震えていた。「絶対に助ける」
イシェは苦しそうに頷く。彼は自分の命よりも、仲間の安全を優先するラーンの決意に深く感動した。そして、彼がいつも感じてきた「こだわり」とは何かを理解した。それは単なる冒険心や財宝への欲求ではなく、仲間への強い絆と責任感だったのだ。
水晶球は手に入らなかった。しかし、３人は貴重な経験と、互いにかけがえのない存在としての絆を手に入れた。彼らの物語は、まだ始まったばかりだ。