ラーンが巨大な石の扉を蹴り破ると、埃っぽい空気が顔面を襲った。イシェは咳き込みながら「また、あの手 crud な方法？ ここは一体…」と呟いた。だが、ラーンの目は輝いていた。「ほら、イシェ！ お宝の匂いがするぞ！」
内部は薄暗く、不規則な形状の通路が広がっていた。ラーンは懐中電灯を点け、足元を確認しながら進んでいった。イシェは後ろから彼の背中に手を当ててバランスを取りながらついていく。
「ここには一体何があるんだろう…」とイシェは不安げに呟いた。「何か嫌な予感がする」
ラーンの足音だけが響く静寂の中、突然、床がぐらぐらと揺れた。イシェは思わずラーンの腕を掴み、「何だ！？」と叫んだ。ラーンも顔色を変え、周囲を見回した。その時、天井から巨大な石が落下してきた。
「危ない！」
ラーンはイシェを押し倒し、自ら石の直撃を受けた。激痛が走ったが、意識は保っていた。「イシェ、大丈夫か！？」
イシェは恐怖で体が震えていたが、なんとか立ち上がった。「ラーン！ あなた…」
ラーンの顔には血が流れていたが、苦笑いしながら言った。「大丈夫だ… よかったな、君が無事だと」
その時、遠くからテルヘルの声が聞こえてきた。「おい、お前たち！ どうしたんだ？」
ラーンの視界はぼやけていった。最後の最後に、イシェの顔だけが鮮明に見えた。彼女の瞳には、恐怖だけでなく、何か温かいものが宿っている気がした。そして、ラーンは意識を失った。
ぐらぐらと揺れる世界の中で、ラーンの耳にはテルヘルの声が響いていた。「…ヴォルダンに全てを奪われたあの日以来、私は一度も泣かなかった…」