ラーンが剣を抜き放つ音が、狭い遺跡の空気を切り裂いた。目の前には巨大な石像が立ちはだかり、その足元にはイシェがうずくまっていた。
「イシェ!大丈夫か!」
ラーンの叫びは石の壁に反射して、不気味に響き渡る。イシェは顔面蒼白で頷く。石像の動きは鈍いが、力強かった。ラーンが剣を振り下ろした瞬間、石像の腕が地面に激突し、衝撃波が彼を吹き飛ばした。
「くらくら…」
視界がゆらぎ、床に倒れ込んだラーンの耳元で、イシェの声がかすれた。
「ラーン!逃げろ!」
石像はゆっくりと、しかし確実にラーンの direção に足を踏み出した。その時、テルヘルが駆け込んで来た。彼女の左手に光る短剣が、右手に握られた巻物から放たれる青い光を浴びていた。
「この遺跡の真の目的は、この石像を目覚めさせることだ!」
テルヘルの声は冷静だった。「石像を倒すことはできない。逃げよう!」
ラーンの頭はくらくらとしていたが、テルヘルの言葉に何とか反応した。イシェの手を掴み、立ち上がった。だが、足元がぐらつく。石像の攻撃で崩れた天井から埃が降り注ぎ、視界を奪う。
「くらくら…」
意識が遠のきそうになる中、ラーンはイシェの声を聞いた。
「ラーン!手を出すな!」
そして、テルヘルの声が響いた。
「あの光…!」
石像の前に青い光が渦巻いていた。その中心には、小さな水晶の球が浮かんでいた。石像は青い光に包まれ、ゆっくりと動きを止めた。静寂が遺跡を満たし、ラーンの耳に、イシェの息遣いが聞こえた。