「よし、入ろうぜ!」ラーンの豪快な声で、遺跡の入り口へと足を踏み入れた。イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら、彼について行く。
「待て、ラーン!あの石畳、崩れかけてるぞ!」
イシェの言葉にラーンが振り返ると、確かに足元には不安定な石畳が広がっていた。
「あ、そうか。じゃあ、こうしよう」
ラーンは軽々と石畳を飛び越え、イシェを呆気に取らせて先に進む。イシェはため息をつきながら、慎重に崩れそうな石畳を踏んでラーンの後を追う。
「ここは…何か違う気がする…」
イシェがそう呟くと、ラーンは振り返り、イシェの顔色をじっと見つめた。「何が?」
「いつもと雰囲気が違うんだよ…なんか…ぎゅっとしているというか…」
イシェの言葉に、ラーンの表情も少し硬くなった。確かに、いつもよりも空気が重く、静けさの中に張り詰めたような緊張感が漂っているように感じた。
その時、遠くから不気味な音が聞こえてきた。それはまるで、何かが石をこすっているような、鈍い音だった。
「あれは…?」
ラーンの顔色が変わる。「イシェ、気をつけろ!」
ラーンは剣を抜いて警戒体制に入る。イシェも緊張した面持ちで、背後からゆっくりと剣を抜き出した。
すると、影が壁に映り込み始めた。それは巨大な影であり、ゆっくりと近づいてくる。
「何だ…!? 」
ラーンの声は震えていた。影がさらに近づくと、その正体が明らかになった。それは、巨大な虫のような姿をした怪物だった。
「逃げろ!イシェ!」
ラーンは叫びながら、怪物に立ち向かった。イシェはラーンの勇気に驚きながらも、後ずさるように逃げる。しかし、怪物はラーンを捕まえようと、巨大な爪で襲いかかってくる。
その時、テルヘルが現れた。彼女は素早く剣を抜き、怪物に切りかかる。
「やれ!イシェ!」
テルヘルの声に、イシェは立ち直り、怪物を攻撃する。三人は力を合わせて、怪物と戦いを繰り広げる。激しい戦いの末、ついに怪物は倒された。
ラーンが倒れ込み、息を切らして地面に伏せると、イシェは駆け寄っていった。
「ラーン!大丈夫?」
ラーンの顔には、汗が滲んでいた。「…ああ、大丈夫だ…」
イシェはラーンの肩に手を置くと、小さく言った。「…ぎゅっとしてたね…」
ラーンはイシェの言葉の意味を理解し、ゆっくりと頷いた。三人は疲れた体を引きずりながら、遺跡から立ち去った。