ビレーの朝はひんやりとしていた。まだ薄暗い空の下、ラーンがイシェを起こしに来た。「起きろ起きろ！今日はテルヘルが珍しい遺跡に連れてってくれるんだぞ！」
イシェは眠そうに目を擦った。「またそんな話かい？いつも大穴が見つかるなんて言ってるけど、結局何も見つからないんだよ。」「違うって！今回は本物だって！テルヘルが言ってたんだ。あの遺跡は、ヴォルダンが昔手に入れた宝物の隠し場所らしいぞ！」ラーンの目は輝いていた。「きれいなものがいっぱいあるんだろうな。宝石とかかな？」イシェは苦笑した。「また妄想してるよ。でも、テルヘルの言う通りなら、今回はもしかしたら…」
3人はテルヘルに連れられて、山奥へと向かった。遺跡は、苔むした石造りの門がそびえ立つ、荘厳な雰囲気の場所だった。テルヘルは、古びた地図を広げながら、「ここにはヴォルダンが略奪した宝石や装飾品が眠っているはずだ」と説明した。「だが、ここはヴォルダンの魔の手が触れなかった最後の場所だから、強力な罠が仕掛けられている可能性がある。慎重に進まなければ」
ラーンは目を輝かせた。「よし！俺たちに任せろ！」イシェはため息をつきながらも、テルヘルに「気を付けてください」と声をかけた。遺跡の入り口には、錆び付いた鉄製の扉があった。ラーンが力強く扉を開けると、中からは冷たい風が吹き出した。
内部は広くて暗い。柱には複雑な模様が彫られ、壁には不思議な絵画が描かれていた。宝石のように輝く絵画は、まるで生きているかのようだった。「きれいだな…」イシェは思わず呟いた。
テルヘルは慎重に足音立てないように進んだ。ラーンの動きは軽快で、イシェは後ろから彼を支えるようにしていた。遺跡の奥深くには、美しい水晶細工で作られた大部屋があった。部屋の中央には、宝石が散りばめられた金の王冠が置かれていた。
「すごい…」ラーンは目を丸くした。「きれいだな…」イシェも息をのんだ。
その時、床に仕掛けられたトラップが発動し、鋭い矢が飛んできた！ラーンはイシェを庇い、矢を受け止めた。
「ラーン！」イシェは声を張り上げた。 ラーンの顔には血が滲んでいた。「大丈夫だ…気にすんな」ラーンの声は弱々しかった。テルヘルは冷静に状況を判断し、近くの柱から飛び降りて、トラップを解除した。
「落ち着け。ここはまだ安全ではない」テルヘルは言った。イシェはラーンを支えながら、ゆっくりと立ち上がった。
「あの…きれいだったね…」ラーンの声はかすれていたが、彼は苦笑いしながら言った。「いつか、俺たちはもっときれいなものを探すんだ」
イシェはラーンの言葉に頷いた。彼らはまだ若い。そして、まだ多くのことを経験する必要がある。