ビレーの朝焼けは、いつもより少しだけ赤く染まっていた。ラーンはいつものように寝坊し、イシェの怒った声で目が覚めた。
「また遺跡に潜るのか？ 今日は市場で新しい剣を手に入れようと思っていたのに！」
イシェが顔をしかめる。ラーンの寝ぐせの悪さと、いつも同じような失敗ばかり繰り返す彼にイライラしていた。だが、その目はどこか諦めきれていなかった。
「大丈夫だ、イシェ。今回はきっと大穴だ！ きっときらめく宝石が詰まった宝箱が見つかる！」
ラーンはいつものように豪語する。イシェはため息をついた。しかし、ラーンの言葉には、いつも以上に力強さがあったように感じられた。
今日はテルヘルからの依頼だった。彼女はいつもより真剣な表情で、地図をテーブルに広げた。
「今回はヴォルダン遺跡だ。危険な場所だが、そこには強力な魔物が眠っているという噂がある。その魔物から奪った剣は、ヴォルダンの軍隊さえも恐れさせるほど強力だと伝えられている。」
テルヘルの目は燃えていた。復讐への執念が、彼女の言葉を鋭くしていた。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。いつもとは違う空気を感じ取っていた。
遺跡の入り口は、まるで獣の口のように大きく開いていた。内部は薄暗く、湿った空気が流れ込んできた。ラーンの足元には、小さな青い石が光っていた。
「あれは…？」イシェが目を丸くした。
それはまるで、星空を映す湖のような美しさだった。石に触れると、わずかに温かさが伝わってきた。
「何か珍しいものを見つけたぞ！」
ラーンは興奮気味に石を拾い上げた。その時、遺跡の奥から轟音が響き渡った。地面が激しく震え、天井からは埃が降ってきた。
「魔物だ！」テルヘルが剣を抜いた。
影の中から巨大な怪物が現れた。その目は赤く燃えていて、鋭い牙を剥いていた。ラーンは剣を構え、イシェは素早く後方に退いた。
三人は力を合わせて魔物に立ち向かった。剣がぶつかり合い、魔法が炸裂する。戦いは激しく、危険なほどに緊迫していた。
その時、ラーンの剣が魔物の体の一部を切断した。そこからきらめく光が放たれ、遺跡全体を明るく照らした。
「あれは…！」イシェの声が震えた。
魔物から放たれた光は、空中に広がり、まるで星空のように輝き始めた。その美しさは息を呑むほどだった。
ラーンとイシェは目を合わせて、無言で微笑んだ。それは、ただの宝石ではなかった。それは、希望の光だった。