ビレーの朝焼けは、いつもより少しだけ鮮やかに空を染めていた。ラーンがいつものように大口を開けてあくびをしていると、イシェが珍しく早起きして朝食の準備をしていた。「今日は何かあるのかい？」ラーンの問いかけに、イシェは小さく頷いた。「テルヘルから依頼が入ったのよ。新しい遺跡らしいわ。報酬もなかなか良さそうだし、今回は慎重に進めましょう」
テルヘルは、いつも通り影のある顔で話した。「情報によると、その遺跡には、ヴォルダンが欲しがっているという古代の遺物があるらしい。我々が先に手に入れれば、ヴォルダンへの打撃になるだろう」ラーンは目を輝かせた。「よし！大穴だ！」イシェはため息をついた。「いつものように計画性がないわね。今回は特に危険だとテルヘルも言っていたのよ」
遺跡の入り口は、深い緑に覆われた森の中に隠されていた。きらきらと光る苔が、まるで宝石を散りばめたようだった。イシェは慎重に足取りを進め、ラーンは好奇心旺盛に周囲を見回した。テルヘルは、常に警戒を怠らなかった。
遺跡内部は、予想以上に広かった。壁には、複雑な模様が刻まれており、きらきらと光る鉱石が埋め込まれている場所もあった。イシェは古い書物から遺跡の解読を試みたが、なかなか手がかりを得られなかった。「何かあったのか？」ラーンの問いかけに、イシェは首を振った。「まだよくわからないわ」
その時、突然、床が崩れ始めた。ラーンは咄嗟にイシェを掴んで安全な場所に移動させた。「気をつけろ！」テルヘルが叫んだ。崩落の原因は、遺跡の奥深くで何かが動いているようだった。
激しい光と音と共に、巨大な怪物が現れた。その体は、きらきらと輝く鱗で覆われており、鋭い牙を剥き出しにしていた。「これは…！」イシェが言葉を失った。ラーンは剣を抜き、テルヘルは魔法の杖を構えた。三人は、力を合わせて怪物に立ち向かった。
激しい戦いの末、ついに怪物は倒れた。その体は、崩れゆく遺跡と共に消えていった。残ったのは、きらきらと輝く宝石の山だった。イシェは目を丸くした。「まさか…こんなものが…」ラーンは大喜びで宝石を拾い集めた。「これで大穴だ！」テルヘルは静かに頷きながら、宝石の一つを手に取った。その宝石は、まるで彼女の復讐心に火を灯すかのような、深い紅に輝いていた。