ラーンの大いなる食欲は、イシェの計算された計画をいつも覆す。今日も遺跡に入る前に、ビレーの小さな食堂に立ち寄り、ラーンは巨大な肉まんを頬張っていた。「おいしそうだなあ…」とイシェが呟くと、ラーンはニヤリと笑って「食いだおれ大会だぞ、イシェ!お前も食うか?」と、残りの半分を差し出した。イシェは苦笑しながら、「いいや、ありがとう。私は少し軽めに済ませるわ」と答えた。
テルヘルは二人を見下ろすように座り、「時間だ。準備は良いか?」と、冷たそうに尋ねた。ラーンの顔には肉まんの油がまだ残っており、イシェはテルヘルの鋭い視線に少しだけ萎縮した。「はい、準備は…。」イシェが答える前に、ラーンが大きく口を開け、「さあ行くぞー!大穴が見つかるかも!」と叫び、遺跡へと走り出した。
イシェはため息をつき、テルヘルに「彼を止められないの?」と尋ねると、テルヘルは小さく笑った。「止められるわ。でも、彼のその…」テルヘルは一瞬言葉を濁し、「あの…無邪気なエネルギーが役に立つ時もあるのよ」と言った。
遺跡の中は薄暗く、湿った空気で充満していた。ラーンの足音だけが響き渡る中、イシェは細心の注意を払って周囲を観察した。すると、壁に沿って、小さく輝く石を発見した。「これは…」イシェが手を伸ばそうとした時、ラーンが大きな声を上げた。「ここだ!何か感じる!」
ラーンの指さす方向には、巨大な石の扉があった。扉には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのように脈打っているようだった。イシェは「危険かも…」と呟いたが、ラーンの興奮は抑えきれない様子だった。「開けろ!テルヘル!」と叫んだ。
テルヘルは冷静に状況を分析し、扉の解読を試みた。その瞬間、石の扉から小さな光が放たれ、イシェに向かって飛んできた。イシェは反射的に手を上げると、光は彼女の指先に収まり、小さな生き物のように輝き始めた。イシェは驚いて手を広げると、生き物は空中に浮かび上がり、まるで蝶のように舞った。
「かわいい…」イシェは思わず呟いた。その瞬間、ラーンの顔に安堵の色が戻り、「やったぞ!」と叫んだ。テルヘルは冷静に状況を分析し、「これは…予期せぬ収穫だ」と呟いた。遺跡の奥深くには、まだ多くの秘密が眠っていた。